山田:では、この構図は20年変わらないということでしょうか。

川島:変えようとしないわけ。だから今回の共産党大会でも全然触れていませんよね。農民工のことは一言も言ってないもんね。

 私は最終的には、中産階級の離反が怖いと思っています。農民はもう分断されちゃうし、農民工も個人個人は不満があるけど、何かちょっとやったらすぐ逮捕ですよね。だからあんまり怖くない。一方で、中産階級の支持はほしい。でも、この人たちもすごく悩んでいる。私は留学生をたくさん抱えているのですごくよく分かるんですよ。

 だって東大に留学したって、中国に戻ってもいい就職先がないわけよ。

中国人で定員を埋める日本の大学

山田:東大に留学してもそうなんですか。

川島:30年前の中国の留学生ってえらく優秀でした。留学生の枠が非常に狭くて、例えば東大が10人募集するというところに万単位で応募してきちゃう。

 今から20年前くらいだと、それほどもう優秀ではないんだけど、非常に皆さん頑張り屋さん。向こうの大学を出てからこっちの大学院に来て、6畳のアパートに3人で住んで。バイトに行きながら一生懸命勉強して帰った。

 このときに留学してきた人の中には、今日本で大学の先生になっている人も多いよね。非常に頑張り屋さんで、結構優秀なんだけど、おそらく飛び抜けて優秀という人はもう米国に行っていたんだと思う。

 それに比べると、今、留学してくるのは、普通の子だよね。

山田泰司

山田:そうなんですか。

川島:東大とか早稲田、慶応が中国人に乗っ取られると報道しているところもあるけど、あれ違うよ。大学院の定員が埋まらないから、それを中国人が埋めてくれているんですよ。今、大学院生のための図書館での説明会、第1回は日本語でやって、第2回は中国語でやるんです。

 大学院の定員の約半分は中国人なんです。半分が日本人。もちろん、ほかの海外の子もいますけど。じゃあ、その子たちがすごく優秀だったら日本の大学は乗っ取られるけど、そんなに優秀じゃない。優秀な子はやっぱり米国に行きたいというし、もっと優秀だったら、まずは北京大学と清華大学、復旦大学に入るんです。

 そこからこぼれちゃうと米国、例えばハーバードとかに留学させたりする。でも、米国にもいけないとなると、お手軽留学で日本に来るんです。実は日本は学費が安いんです。ドイツとかフランスも学費は安いけど、ドイツやフランスに中国人が行きたがらないのは、卒業するのが難しいから。

山田:なるほど。

川島:日本は入れば卒業させてくれる。これは東大でも最大の問題なんだけど、文科省は入学させたら卒業させろと言うし。

 だから中国からは留学生がたくさん来ています。日本が一番そういう意味ではなめられています。ただ、中国の企業ももう気が付いていて、日本の大学で、しかも東大、早稲田、慶応で学位を取ってきても、たいしたことないと。米国の大学出身者よりもレベルは落ちるし、それほど使える人間でないというのが分かってきているわけですよね。

 だから、日本に留学に行って、2年後、3年後に中国に戻ってもそんなにいい就職先がないんです。ちょうど日本でバブルが崩壊したときのような感じですね。

 バブルといえば、そういう子どもを留学に行かせられるような家庭は不動産を持っているわけですよ。だけど今、簡単に売っちゃいけないみたいだし。

山田:そうですね。

川島:今中国がやっていることは、私の聞いている範囲では、全部統制経済にして続かせようと思っているんだけど、これは無理だもん。