そんなことを考えながら私はいつの間にか眠りに落ちたようだった。そして翌朝、再びリンクを開いてみると、既にページは削除されていた。

農民の失望・怒りを習氏に仕向ける政敵

 幸いなことに私は文書のキャプチャをスマホの中に残していた。そこで農民工の知人の1人に、あなたのところにもこれが届いたか? といって見せてみた。「オレのところには来ていない」と彼は答えたが、22項目の新政策にはとても興味を示した。「これは聞いたことがある。これも本当かもしれない」と1項目目から順を追って読んでいた彼だったが、8項目目の「一切の特権を禁ずる」のあたりまで来ると、あまりにもきれい事や理想のオンパレードだと気付いたのか、スマホから顔を上げて、「この文書はウソだな」と言った。そして彼は次に、驚くべきことを言った。

「これを流したのは、『台独分子』(台湾独立主義者)じゃないのか?」と。

 それを聞いて私は思わず苦笑した。習氏を応援しようと繰り返し主張している割には、夫人が率いる文工団の一件のように、暗に習氏を批判している内容が含まれているのは私にも既に分かっていたのは先に書いたとおりだ。ただ、そこから先が、「習氏を批判する勢力」イコール「習氏、すなわち中国の意に反して中国からの独立を企てる台湾の独立主義者」という思考回路になってしまうのは、メディアがすべて政府や党の管理下に置かれ、当局の主張を垂れ流す広報のようなテレビ番組が頻繁に流れる中国ならではのことだと思った。

 ただ、22項目の新政策の文書を流したのが台湾独立主義者かどうかはさておき、彼の発言は私にあることを気付かせてもくれた。

 「えー、なんで台湾独立主義者がこの文書を流すのか、オレにはまったく分からないなあ」と私が言うと、彼は、「この日本人は何十年も中国に住んでいてそんなことすら分からないのか」というような顔で私を見つめ、こう続けたのだ。

「この政策を実行するというなら、オレたちみたいな農民は習近平を支持したくなるよ。ただもし口だけで実行しなかったり実現しなかったら、期待が大きい分、習近平に失望し怒りを覚えるよ。そして、冷静に読めば実現しそうもないことが随分盛り込まれているじゃないか。習近平の評価を下げれば台独分子にとっては思うツボさ、そうだろ?」

 なるほど、と思った。あの22項目の新政策は、文工団のような項目で習夫人や習氏を暗に批判するだけでなく、美辞麗句を並べて習氏を持ち上げるだけ持ち上げた上で、実行されないことが分かったときに農民工ら民衆の失望や怒りがより大きなものになることを狙ったものなのかもしれない、と。

(以下、明日の後編に続く