収入半減の衝撃

 ウォールストリートジャーナルによると、フォックスコンは今回の2人の死亡の事実を認めて哀悼の意を示すとともに、状況の調査に協力していると表明。その上で、同社が全従業員の健康と幸せの保証を最優先事項とし、業界で最上級の労働環境を提供していると強調した。ただ、ウォールストリートジャーナルは、同紙が取材した十数人の従業員らがみな、新型iPhoneの増産によるプレッシャーと同僚が自殺した原因に因果関係があるのかどうかを知りたがっていたと伝えている。

 私はEMS業界の専門メディアの編集をしており、EMS各社の待遇を目にし耳にする機会は多いのだが、「最上級」かどうかはさておき、フォックスコンの待遇が業界の中で上位に位置しているのは間違いないように思う。半面、私が今回の自殺の記事を読んで強く印象に残ったのは、販売の減速が目立つとは言え、それでもなおスマホの代名詞的存在であり花形のiPhoneを製造するフォックスコンの工員らの稼ぎが明らかに悪くなっていることである。

地方料理の屋台が建ち並ぶ一角に昼食をとりに出てきたフォックスコン深セン工場の工員ら(2012年)

 ウォールストリートジャーナルの記事によると、iPhoneの組立ラインで働く工員の月給は手取りで1400元(約2万1000円)前後だというのだ。この額は、住居費と食費を差し引いた額であり、かつ、残業すれば、手取りは2倍になるというのだが、2013年モデルの「iPhone 5s」や14年モデルの「iPhone 6」を製造していた頃、彼らの手取りは残業代込みなら5000元(7万5000円)に届いたはず。そう思って記事を読み進めていくと、やはりiPhoneがヒットしていた当時には5000元かそれ以上稼げたという工員の証言があった。

 ある工員は、最近は残業が少なくなり、誰もが残業できる状況にないとし、残業できなければ稼ぎがほとんどなくなってしまうため、特に家族持ちにとっては大きなプレッシャーになっていると語っている。また別の工員は、フォックスコンの工場で時折自殺する人が出てしまうのは、個人の問題を解決するだけの経済的な余裕がないためだとの考えを示している。

景気低迷で残業ゼロ、直撃する家賃高騰

 スマホやパソコンなどの電子機器を製造する工場で働く人たちの収入が、製品販売の頭打ちを背景に、この1~2年で著しく減る傾向にあることを、私も拠点を置く上海で目の当たりにしている。

 シャオチャン(32歳)も収入の減少に悩んでいる1人だ。彼女は、台湾のEMS大手、英業達(インベンテック)が上海郊外の浦江鎮に置く中国子会社の製造工場で4年前から工員として働いている。同工場では主にノートパソコンの製造を手がけており、直近では、中国のスマホ大手、小米科技(シャオミ)と、SIMフリースマホ「ZenFone」シリーズが日本でも人気の台湾エイスース(ASUS)のパソコンを造っているという。いずれも中国をはじめとするアジアでは人気ブランドだが、シャオチャンによると、この工場でも現状、残業は全くなくなったという。