世界最大のiPhone製造拠点、フォックスコン鄭州工場(2015年)

 今日から9月。私にとって9月はこの3~4年で、新しいiPhoneに買い換える月としてすっかり定着した。この原稿を書いている時点で、今年の新型iPhoneの発表は9月7日になるとの観測が有力。ディスプレーに有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)が搭載されるとのうわさで今から持ちきりの2017年モデルに比べ、今年は目新しい特徴がないとの見方がもっぱらで、売れ行きを懸念する報道が後を絶たないが、実際にはどうなるのかが楽しみではある。

繰り返す悲劇

 こうした最中、iPhoneを製造するEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業の中国製造子会社フォックスコンで先月、工員の飛び降り自殺という悲劇が再び起きたことが明らかになった。伝えたのは2016年8月22日付の「ウォールストリートジャーナル」で、8月18日に河南省鄭州の工場で夜間のシフト勤務を終えた31歳の男性従業員が工場の屋上から飛び降りて死亡したと報じた。

 さらに同紙は、翌19日にも、やはり鄭州工場に勤務する女性従業員が、通勤途中に水浸して通行できなくなっていた地下道を避けるため、フェンスを乗り越えて線路を渡ろうとしたところを電車にはねられ死亡したと伝えた。

 鄭州工場はフォックスコンにとっても、製造を委託している米アップルにとってもiPhone製造で世界最大の工場で、生産のピーク時には20万人とも30万人とも言われる工員がこの工場に集められ、1日あたり最大50万台ものiPhoneを製造することで知られる。ウォールストリートジャーナルによると、自殺した先の工員もiPhoneの組み立てに従事していたのだという。

2010年にわずか5カ月間に12人の自殺者が出た深センにあるフォックスコンの工場群(2012年)

 さて冒頭で、自殺という悲劇が「再び起きた」と書いたのは、フォックスコンでは2010年にも工員の飛び降り自殺が相次ぐという事態が発生したためである。この時は1月から5カ月あまりの間に、当時、フォックスコン最大のiPhone製造拠点だった広東省深センの2つの工場に在籍する12人もの社員が自ら命を絶つという異常事態になり、鴻海の地元台湾や、工場のある中国のメディアはもとより、日本や欧米などのマスコミもこぞってこれを取りあげ、連日15時間にも及ぶという過酷な労働環境や、基本給が月900元(現在のレートで約1万3500円)という低賃金とともに世界中で注目された。鴻海がシャープの買収を決めたのにあたり、今年になって当時の連続自殺を再びクローズアップした日本のメディアもいくつかあったので、それで一連の出来事を知ったり改めて思い出したという人も多いことだろう。