例えば、彼ら彼女らを年代で切り取ってみると、同じ20代であっても、司法判断に反発する人もいれば、沈黙する人もいる。ただ、反発する人にほぼ共通する背景として、「大学に進学していない」ことが、沈黙を守る人には「大学に在学中、あるいは大卒」が多いことが分かった。

 では、大卒であれば年代に関係なく沈黙なのかと言えばそうではなく、50~60代の大卒はむしろ、どの一群に比しても激しく司法判断に反発し、フィリピンや米国を非難しているのだ。この、現在50~60代にある人たちのことについて少し説明を加えると、彼ら彼女らは国の機能がマヒした文化大革命(1966~76年)の時代に学齢期を送り、「人生を台無しにされた」という意識が極めて強い。このため厭世的、虚無的な傾向が強く、行動も発言も無責任で、物事に対して見境なく常に怒り続ける、言葉を換えると当たり散らす傾向があるという特徴を持つ。文革末期に再開した大学入試に、省で数人というような気の遠くなるような競争を勝ち抜いて進学したという人も少なくないため、この世代の大卒はとんでもなく優秀で知識も豊富な人が多いのだが。

ハーグ裁定に反発するのは「国に残らざるを得ない人」

 さて、話を戻すが、南シナ海問題についての司法判断に反発していた人たちのことを、もう1つ大きく括ることができる枠がある。それは、「今後も恐らく中国に居続けるしかない人たち」というものだ。一方で、SNSで南シナ海問題に沈黙していた人たちは、「留学や移民で国を出て行く可能性がある人たち」だということ。

 私は、大学や大学院に在籍している若い世代の中国人の友人たち、その中でも比較的付き合いの長い人たちに会い、話が南シナ海問題になると、決まって彼らに言うことがある。それは、「国力が上がってきたことで、中国に誇りを持つ人が増えるのは当然の流れだと思うし、強気の背景には経済力に裏打ちされた自信があるのだと理解している。それらを背景に、国の中でどう振る舞おうと、それは中国の自由だ。でも、外に出て同じ振る舞いをしたら、周囲の国や人たちから必ずしも理解を得られるとは限らないということについては、常に認識しておくべきだ。とりわけ今後、外国や外国人と接する機会が増えるだろうあなたがた教育のある若い世代の人たちは」。

 こう言って、さて、どれだけ彼らから反発されるのだろうと身構えるのだが、拍子抜けするほど「その通りですよね」というような答えが返ってくることがほとんどなのだ、と言ったら、日頃、メディアを通じて強面の中国を見ることが大半だろう日本の読者は信じてくれるだろうか。いずれにせよ、大学に進学した若者たちがこのように穏健な考えを持ち、自らと国を客観視できるということは、進学することで中国以外のものに触れる機会が増えることが大きいのだと思う。

国内派の妬みと国外派の逃避

 さて、そこでポケモンGOだが、先に紹介したポケモンGOの掲示板やSNSで、数日前から「国を愛するのであればポケモンGOはやるな」という愛国論や、日本や米国のものを排斥しろという意見が飛び交うようになっている。そして、愛国論、日米に対する非難、批判を展開しているのが、南シナ海問題で裁定に反発したのと同じ人たちなのである。

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