気を取り直して2番目のポケストップに向かったが、そこも租界時代に建てられたアパートを取り壊し再開発の工事をしている最中だった。あるはずの地球儀を模したようなオブジェは影も形もない。改めて書くのもイヤだが、画面は荒野のままだ。

 騙されたってこと? という疑念が頭をかすめたが、いやいや、両方工事中だったってことは、地図や写真のアップデートが間に合わなかっただけかもしれないと半ば強引に思い込み、3カ所目に向かった。

地図通りの場所にオブジェはあったが、夜に再訪してもやはりポケストップはなかった
地図通りの場所にオブジェはあったが、夜に再訪してもやはりポケストップはなかった
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 結果から言えば、3~5カ所目にはいずれも地図の番地通りの所に写真通りのオブジェがあった。ただ、そのいずれにもポケストップはなかった。無駄だと思いつつ、なけなしの道具の中から「おこう」をたいてポケモンをおびき寄せてみた。しかし、もう書くのも飽きたが、画面には相変わらず、荒野が広がるだけだった。

 中国でポケモンGOが公開される見込みがあまりないと言われていることも手伝って、中国では既に本物を模した「都市精霊go」などといった同様のアプリがある。iPhoneのApp Storeにも並んでいるから、ニセモノというのは言い過ぎだが、パクリとは言ってもいいだろう。ポケストップの地図と写真だとして私が見たのは、それらパクリアプリのスポットなのかもしれない。ただ、私が訪れた5カ所の付近をスマホの画面に目を落としてウロウロしている人も他に見かけなかった。いくら酷暑の昼下がりとは言え、学生は夏休みに入っているのだから、本物のポケモンGOやパクリアプリのポケストップが本当にあるのならば、1人や2人は探している人を見かけてもいいはず。いずれにせよ、私はまんまとしてやられた、ということなのだろう。

ポケモンGOと南シナ海問題の共通点

 ところで、中国におけるポケモンGOのことを調べていく過程で、ある興味深いことに気付いた。それは、ポケモンGOを巡る掲示板やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上における中国人の反応に、南シナ海問題といくつかの共通点が見られる、ということである。

 南シナ海問題とは言うまでもなく、中国が南シナ海で主張する権利について、ハーグの仲裁裁判所が7月12日、国際法上の根拠がないという司法判断を下した件のこと。フィリピンの主張を全面的に支持する判断に、中国当局や政府高官が「判決は紙くず」「茶番」などとして激しく反発した。

 ハーグの司法判断が出た当日からしばらくの間、中国のネットにも司法判断に反発する書き込みが溢れた。中国最大のSNS「WeChat」には、「モーメンツ」という項目があり、「朋友圏」すなわち友達・知り合いとして登録している人たちが不特定多数に向かって発したつぶやきを載せるスペースがあるのだが、司法判断直後から数日にわたって、この欄には知人らの愛国を叫ぶ声、中国の領有を主張する声、フィリピン、仲裁裁判所、米国、そして日本を非難する意見が飛び交った。

 ところが、これら司法判断に反発する意見を書き込む人たちや、その一方で沈黙を守っている人たちを眺めているうちに、共通する背景を持つ人たち同士が、同じような意見を発する(あるいは沈黙する)傾向にあることに気付いた。

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