ところが、さてそろそろ1匹捕まえてみるかとフシギダネにボールを投げて捕獲、成功したご褒美にニックネームをつけることを許され、シルバーグレイのアニメのオヤジに「いいニックネームだ」などと褒められてヤニ下がっていたのもつかの間、残りの2匹が金輪際、登場しなくなってしまった。

延々と続く荒野

 慌てて調べてみると、どうやら捕獲できるのは3匹のうちの1匹だけということなので、そこまではいい。ただ、画面に現れる風景が、歩けども歩けども荒野が広がるのみになってしまったのだ。自分のキャラクターが画面の端にポツンといるというビジュアル的効果も相まって、途方に暮れる感がハンパない。現実世界への切り替えもできなくなってしまった。

 愚かなことだがこの時に至って初めて私は、「ポケモンGOは中国ではできません」の意味を悟った。中国にはスタート時点で出てくるあの3匹以外のポケモンや、ポケモンをおびき寄せるポケストップがいたりあったりしない、ということなのだと。インストールに成功し、グーグルの地図が使えればできるというわけではないらしい。

 ポケモンGOの面白さを私に力説してくれた大学生に聞くと、彼も自分のアンドロイドのスマホにアメリカ経由でアプリはインストールでき、最初の3匹は出てきたもののそこからは何もできない、と私と同じ状況だという。ただ、「なぜだか分からないけど、新疆ウイグル自治区と内モンゴル自治区では遊べるらしい」という情報を教えてくれた。

 再び調べてみると、グーグルに地図データを提供していないためやはりポケモンGOができない韓国でも、38度線より北に位置する束草という港町などプレイが可能な一部の町に若者たちが押し寄せているということが伝えられているが、同じことが新疆ウイグル自治区や東北の遼寧省などいくつかの土地で起こっているとの中国メディアの報道が多数あった。遼寧省のある公園に出現したポケストップに若者たちが大挙して集まりスマホをかざしている様子を写した動画もあった。新疆も遼寧省も国境に接する省なので、グーグルをブロックするエリアから漏れているところがあるということらしい。

 そこで、上海にもポッカリそんなエリアがないものかと、中国の検索最大手バイドゥ(百度)にあったポケモンGO掲示板で情報を漁ってみた。私同様、「インストールしたものの荒野が広がるのみ」「原っぱしか出てこない、助けて!」と絶望する書き込みの海をかき分けながらスクロールしていくと、上海のポケストップを地図上にマークした、という画像を見つけた。

ポケストップにあったのはショベルカーだった

 ポケストップは名所旧跡に置かれることが多いそうだが、地図にマーキングされた5カ所の上海のポケストップにもオブジェやモニュメントがあるそうで、番地まで載せた詳しい住所とともに目印のオブジェの写真まで載せてある。これはありがたいと地図と写真をスマホに取り込み現地に向かった。

ポケストップがあるはずの場所には目印の彫像の代わりにブルドーザーが(左)。同じ場所の画面には茫々たる荒野が広がるのみ
ポケストップがあるはずの場所には目印の彫像の代わりにブルドーザーが(左)。同じ場所の画面には茫々たる荒野が広がるのみ
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 最寄りの地下鉄駅でポケモンGOを起動する。アニメの画面は相変わらず荒野のままだが、現実に川があると画面も川、交差点にさしかかると画面も交差点と、地図は正常に作動しているようだ。それに意を強くして最初のポケストップにぐんぐん近づくも、やはり画面は荒野が続く。そして地図ではあと数10メートルで目的地という時点で、新築マンションの工事現場に入ってしまい、ポケストップがあるはずの場所にはショベルカーが停まっていた。情報ではそこにはゴルフをするオヤジの像が建ってるはずなのに。周辺を歩き回ってみたが、やはり画面は荒野のままで、ポケストップもポケモンも出てきやしない。私を投影したキャラクターは現実の私同様、けなげに歩いている。違うのは 画面の中の私が汗ひとつかかず涼しい顔なのに、現実の私は汗みずくで、午後2時に39℃の高温下、多少めまいがしていたところか。

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