中国人の爆買いの勢いは止まらないが、、(写真=AP/アフロ)

 「シャープも東芝も中国の企業に買収されちゃうんだってねえ」。「そうだってねえ」。

 横浜でランチをとり、食後に熱くて甘いチャイを飲んでいたとき、このような会話が耳に入ってきて、私は思わず聞き耳を立てた。この前夜、東芝と美的集団のことを取り上げた前回の原稿を書き上げたばかりだった私は、なおさら2人の会話に吸い寄せられた。

 そこは中華街にあるインド料理の店。昼休みも終盤になり人が退き始めた店に、いま入ってきたばかりなのだろう、テーブルに向かい合って座りメニューを眺めている男性2人が声の主だった。年の頃は共に60歳前後。2人の身なりや雰囲気から感じたあくまで想像だが、1人は大企業の子会社の重役クラス、もう1人は中小企業の経営者で、店員に対する接し方などを見ると、共に紳士と呼びたくなるような風格がある。2人の関係は取引先ではなく友達同士のように見えた。

日本のビジネスパーソンは中国企業も台湾企業も一緒?

 さて、冒頭に挙げた2人の短い会話には既に2つ、間違いがある。東芝が中国の美的集団に売却するのは白物家電事業のみで、シャープのように会社を丸ごと身売りするわけではない。また、シャープが売却交渉をしていた鴻海(ホンハイ)精密工業は台湾の企業であり、中国の企業ではない。2人とも、それぞれの企業でかなり上の立場にあるように見えるが、彼らの会話を聞いて、日本のビジネスパーソンの少なくない人たちにとっては、中国も台湾もまだまだ一緒くたなのかな、と思った。

 中国が主張する「1つの中国」論争はさておき、ビジネスの世界では、台湾と中国の企業はしっかりと区別される。1つの中国を主張する中国人自身、台湾の企業と中国の企業とは別物として扱う。もっとも、中国人は、「中国の中の一地方としての台湾」という意味合いで言っている部分もあるのだろうが、例えば上海の企業、北京の企業、広東の企業は中国の企業として扱うが、台湾の企業はやはりこのカテゴリーに入れずに区別する。

 一方でこの時私は、横浜中華街という土地柄、この会話の主が中国シンパで、1つの中国を踏まえた上で、鴻海と美的集団を中国企業と言っている可能性もあるのかなということがチラリと頭をかすめた。ただ、そこから先に続いた2人の会話から、それは考えすぎだということが分かることになる。それに、今回の話の眼目も、この先の会話にある。