高層の集合住宅の入り口と、中庭の様子。四方を囲む形にして外部と遮断し通り抜けできないようなスタイルにしている(上海市内)
高層の集合住宅の入り口と、中庭の様子。四方を囲む形にして外部と遮断し通り抜けできないようなスタイルにしている(上海市内)
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 町造りや住居造りにおけるこのような精神やスタイルは、現代に至るまで脈々と受け継がれてきた。こうした住宅群の中には数百戸、数千戸が入居する大規模なものもあるため、囲いの中に学校、スーパー、病院、銭湯、美容院、レストランなど生活に必要なものがそろっていて、壁の外に出なくても最低限の用が足りるようになっている所もある。

 こうした居住区の中にある小さな路地が、壁で囲う文化のない都市における路地裏、裏通り、横丁に相当するものなのだろう。ただ、囲いの中の路地には、閉鎖された他人の空間に入っていくような居心地の悪さと、あくまで壁で守られた生活の空間という予定調和の空気が流れている。無防備に外界にさらされている場所に自然発生的に形成された路地や裏通り、横丁で感じる危うさやスリル、ドキドキ感やワクワク観が、囲いの中には欠如しているのだ。

城壁文化廃止の論争

 さて、住居群を壁で囲って住人以外の出入りを制限する居住区を形成することで困るのは、誰でもが通行でき利用できる一般道の数が少なくなることである。壁や壁代わりの商店で四周を囲った四角い積み木のような居住区をすき間無く敷き詰めた結果、行けども行けども次の道との交差点にたどり着かない町が出来上がってしまったというわけだ。

 その中国で今、壁で四周を取り囲むスタイルの居住区――中国語では「封閉式小区」と呼ぶ――を禁止しようという動きが持ち上がっている。

 提案しているのは中国共産党中央と中国政府だ。今年の2月下旬、これから新たに開発する住宅については壁を設けず、居住区の敷地内を通る道路も、クルマと人の往来を自由にさせようというのがその内容。さらに、既にある居住区についても、段階的に壁を取り払って誰でも自由に通り抜けできるようにしていくことを目指すという。

 当局が理由として挙げているのは、誰でも通れる一般道を増やすことによる交通渋滞の緩和。なかなか解決の糸口がつかめないPM2.5をはじめとする深刻な大気汚染も、交通渋滞が元凶の1つだから、理由としてはごくまっとうなものだと言える。

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