アップル・中国依存脱却としてのインド、そしてアフリカ

 ただ、スマートフォンの成長はここに来て明らかに減速している。2015年第4四半期のスマートフォン世界販売台数は前年同期比9.7%増の4億310万台と、2008年以降で最も低い成長となった。iPhoneは同4.4%減と、登場以来初めての前年割れとなった。iPhoneをはじめとするスマートフォンの成長を牽引する原動力となってきた中国市場も、2015年の出荷台数は4億3410万台、成長率は2.5%にとどまるなど(IDC調べ)、成長の鈍化には著しいものがある。

 こうした環境下、鴻海は、仮にアップルからiPhoneに搭載する有機ELディスプレーを受注したとしても、これまでのようにアップルに、iPhoneに、そして中国に依存しすぎていては危ない。さらに中国は鴻海にとって、最大時で120万人もの労働者を抱えていた同社にとって最大の製造拠点だが、近年、人件費の高騰で製造コストがかさんでいるほか、若者の製造業離れも相まって、中国での製造も年々難しくなりつつある。

 そこで鴻海が目を付けたのがインドであり、EVである。

 インドのスマートフォン出荷台数は昨年、前年比28.8%増の1億360万台だった(IDC調べ)。中国が2.5%成長にとどまったのとは対照的で、スマートフォン市場の牽引役が中国からインドに移行していることをうかがわせる数字だ。IDCによると、2015年第4半期のシェア上位5社は、サムスン、中国レノボ(聯想)、残りの3社はMicromaxなどインド地場系だった。このほか、シャオミ(小米科技)、オッポ(欧珀)など中国系の進出が目立つ。英紙「フィナンシャルタイムズ」(2月12日付)によると、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は1月の投資家向け説明会で、インドでの事業計画を「信じられないほどエキサイティング」と評し、同市場に対する期待の高さを露わにしたという。

 こうしたインド市場の潜在力を背景に、鴻海はこれまで中国に偏重してきた製造の軸足を、次の巨大市場であるインドに移すことを計画している。郭会長は昨年8月、インド西部のマハーラーシュトラ州政府との間で、今後5年間に50億米ドルを投じて新工場を建設、5万人を雇用するなどとした覚え書きに署名した。

 同時に鴻海は昨年からインドのアンドラプラデシュ州で台湾エイスース、実質的にフォックスコンが傘下に収めている米Infocus、シャオミ、ジオニー(金立)、メイズ(魅族)、オッポ、ワンプラス(一加)など中国ブランドのスマートフォンを製造。昨年だけで100万台を製造している。また、台湾の夕刊紙「聯合晩報」(1月14日付)は鴻海インド法人幹部の話として、鴻海がインドをアフリカ向けの拠点として育てる意向を持っていると報じた。シャープ買収や有機EL供給に向けた巨額投資は、鴻海が既に「中国の次」としてのインドだけでなく、「インドの次」まで見すえた上でのものだということができる。

EV車載ディスプレー供給への期待

 ただそれでも、スマホが欧米、日本、中国で既に大きな成長が望めないという事情に変わりはない。そこで鴻海が重視しているのがEV市場である。

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