配達員は月8000元(約13万円)ほど稼げると言われる。中国の水準からいうと悪くはない。ただ、遅配で罰金を取られるからといって泣き出してしまうのだから、実際に稼げる金額には幅があって、この半分程度しかない人も少なくないのだろう。
時間指定など細やかな宅配便のサービスで先行していた日本では昨今、宅配便の過酷な労働環境がクローズアップされ、少し前には佐川急便のドライバーが荷物をぶん投げている動画が広まり物議を醸すと同時にドライバーの負担の重さが改めて浮き彫りになった。
これに対して中国は、配送を頼むと朝から晩まで1日中待つことを覚悟するというのがつい2年ほど前まで当たり前だった。それが、ITの発達とスマートフォンの急速な普及により、中国の配達員も、今どこにいるのかをリアルタイムで把握されるという過酷な状況に追い込まれている。客の側も端から諦めてゆるーく気長に配達が来るのを待つというのが普通だったのに、宅配サービスに求められるシビアさは日本並みになった。いや、遅配で罰金というのだから、一気に日本を飛び越えさらに過酷になってしまったとも言える。
中国に20年近くも住んでいると、これまで数え切れないほど、中国の魅力は何ですか? と聞かれてきた。その時々で少しずつ言い方は変えてきたが、いま答えるのであれば、「大人が泣き出すほどの追い込まれ方をするストレスがないこと」だと言うだろう。しかし、こう答えられるのも、いまが最後ということになるのかもしれない。対立することが多い日本と中国。その一方で、思わぬところで均質化も進んでいる。

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