山田:情報の遮断でいうと、私の知り合いの農民工の息子に、優秀な子がいて、中国科学院という政府のシンクタンクで働いている。その子に、何が不公平だと思うかと尋ねたら、「海外の論文に海外の人たちと同じようにアクセスできないことが不公平だと思う」と言ったのです。とても面白いなと思ったんです。

内田:それは大きなハンディですからね。

山田:ええ。海外を意識しているんだなと思って。

情報遮断がある限り、中国が世界を率いることはない

内田:そうだと思いますよ。先端的な学者たちは、毎日新しい学術論文がネットに上がったのを何十本も読むそうですからね。東京大学大学院教授で脳研究者の池谷裕二さんなんか信号待ちしながら、iPadで論文読んでるそうですから。それくらいのペースで読み続けないと科学技術の進歩をキャッチアップできない。

 ネット上に行き交う膨大な情報の中から本当に重要な情報だけを拾い上げていく情報リテラシーが必要になる。情報を遮断しているというのはやっぱり、玉石を瞬時に見分ける情報リテラシーを育てる上では、大きな障害になりますね。

山田:10年後ぐらいにそれが顕在化してくることもありますね。

内田:ありえますね。それまでは人海戦術と札びらで科学の進歩にキャッチアップするということはできるんだけれども、新しい世界標準を中国人が作り出すということは難しい。

山田:そうですね。現状でいうと、それだと10年後でも厳しいですね。

内田:厳しいです。

山田:10年後だと、中国に不安要素が増えますね。

内田:これだけ中国が大国意識を持ってきて、自分たちが世界のトップリーダーだというようなプライドが育ってきたけれど、結局、イノベーションはことごとくアメリカ発だということになってくると、そこに壁ができる。何度も言うように、真の国力というのは、経済力や軍事力ではなくて、文化的な発信力なんです。世界中の優れた学者たちが「中国にいると、やりたい研究が自由にできる」と思って中国を目指すようになれるまでは、アメリカには勝てないでしょう。

 例えばアメリカの学生院生が、中国でないと自分がしたい研究が続けられないからと言って中国に留学するという環境が整わない限り、中国がトップになることはないです。だから、情報遮断がある限り、中国が学術的発信力で世界を率いることはありえないです。

山田:そうですね。

内田:そこがやっぱり中国の最大のネックですね。

山田:ロシアにも行かないし、ほかの国は行かないですね。そう考えるとトランプさんでもまだアメリカはちょっと強いんでしょうかね。

内田:トランプが出てきた後、アメリカではメディアがトランプを激しく批判していますね。その復元力、バランス感覚がアメリカの最大の強みなんですよ。

山田:俺たちがしっかりしなきゃというところですよね。

内田:そうなんですよね。アメリカでも、本当にしっかりしている人はしっかりしていますから。今回のトランプの迷走を見ていると、日本とアメリカでは政治の仕組みが全然違うなと思います。

山田:そうですね。まったく忖度しないですもんね、アメリカの人は。

内田:見事なものですよ。

山田:そうですね。すごいな。

内田:やっぱりあの復元力というか、間違ったことをした後に失敗を認めて補正する力はアメリカは世界で抜きん出ていますね。

山田:本当にそう思います。本日はいろいろとありがとうございました。