この道一筋に対する評価が低いということは、副業をすることに抵抗がない、と言い換えることができる。空いている時間を貪欲に使って副業に精を出すのが中国。「空いている時間などない」とばかりに寝食を忘れて1つのことに打ち込むことで技術を磨き上げてきたのが日本。この気質の違いが、シェアリングエコノミーが拡大していく速度に密接に関係しているのだと私は考える。
ニセモノと分かっていても買ってしまう気質
ライドシェア拡大による影響を聞いた先のタクシー運転手と会社への行き帰りにマイカーに客を乗せてライドシェアをしている先の上海人に同じ質問をぶつけてみた。白タクの被害がこれだけ叫ばれている中、いくらアプリで身元確認ができるからとはいえ、客は怖くないのだろうかと。すると運転手は、「タクシーより安い。それだけ。中国人にとって、安いに勝る魅力はないんですよ」との答えが返ってきた。マイカーで商売をする彼は、「ネットで売っているモノの半分がニセモノだと分かっていても、安ければ買い物をやめられないのが中国人。それと同じ心理ですよ」と言った。
「半分がニセモノ」というのは、中国政府が2015年1月、中国のネット通販サイトで2014年下半期に販売されていた商品のサンプル調査をしたところ、4割強がニセモノだったと発表したという話のこと。ところが、その調査結果が出たにもかかわらず、中国でネット通販各社が年最大のバーゲンを行う11月11日、最大手のアリババが1日で912億元(約1兆6500億円)を売り上げるなど、各社とも軒並み過去最高を記録した。これを受け中国では、ニセモノが多いと知りながらも、安いと聞くと買わずにいられないという中国人の気質が議論になった。リスクが少なくないと思いつつライドシェアを使うのもこれと根は同じだと言うわけである。
中国交通運輸部(国交省)は1月21日、間もなく到来する春節(旧正月)で毎年鉄道や航空便で起きる殺人的な帰省ラッシュの緩和に役立つことを期待するとして、儲けを出さないことを前提条件として、許可を持たない個人がマイカーで同じ地方に帰省する人たちを相乗りさせること、すなわち(3)のライドシェアを奨励すると表明した。空いている時間を貪欲に使って副業に精を出し、だまされ、時に命が危険にさらされるリスクが有ることを知りながら、果敢に値段の安さを選択する国民の気質。標語では白タクへの注意を喚起しつつ、関連法を整備する前にライドシェアを推奨する政府のアバウトさ。これらの要素が絡み合い、中国のライドシェア市場拡大を生み出している。
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