「最近、以前にも増して6時ピタで帰る社員が増えた。困ったもんだ」。上海で企業を経営する中国人の知人がそう言って苦笑した。「聞かなくても理由は分かっている。マイカー通勤の社員たちの中に、退勤時に合わせて副業をする者が増えたからだよ」。

 社員らのしている副業、それは、自分と同じ方向に帰る見知らぬ人をマイカーに相乗りさせて小銭を稼ぐ「ライドシェア」だ。 

6時ピタ社員激増の理由

配車サービスのスマホアプリ。出勤の行き帰りで稼いだ金額が表示される

 上海で最近、「ライドシェアをやっている」「ライドシェアを使った」と話す中国人の話をよく聞くようになった。ライドシェアと言えば、民泊と並んで、個人の空いている時間や施設、資産を使ってサービスを提供し報酬を得る新しい仕事のカタチ「シェアリングエコノミー」の中でも代表格と言われるビジネスだ。

 中国のライドシェア事情については、日経ビジネスの2015年12月21日号の特集「世界の常識 日本を急襲 シェアリングエコノミー」に詳しいので是非そちらを参照してもらいたいが、シェアリングエコノミーの中でも、クルマの相乗りサービス「ライドシェア」において、中国は世界の先進国で、日本は潮流に乗り遅れているのだそうだ。実際、ライドシェアビジネスの牽引役である最大手のUber(ウーバー)では、世界の乗降数に占める中国の割合が3割を超えるのだという。そこで今回は、なぜ中国でライドシェアの受け入れが進み、日本では進まないのかを考えてみたい。

儲けを出してはダメ?

 中国で現在、ライドシェアを手がける配車サービス会社が提供するサービスには次の3つがある。(1)正規のタクシーの配車。(2)運転手付きでクルマをリースし、客の希望する目的ならどこへでも送迎を行う、日本で言えばハイヤーのサービス。中国語では「専車」と呼ぶ。(3)運転手と同じ方向に行く相乗り客に配車するサービス。中国語では「拼車」と呼ぶ。

 いずれのサービスも、許可を持たないクルマが営利を目的に営業することは禁止されている。このため配車サービス会社は、営業許可を持つリース会社と提携した上で、登録した個人やクルマを使って事業を行うケースが多い。また(1)〜(3)の実施状況は都市や省によってまちまちで、上海では、営業許可を持つ正規のタクシーでも(3)、すなわち相乗りを行うことは認められていない。

 ところが、冒頭で書いた会社の社員たちが副業でやっているのは(3)なのである。営業許可を持たない個人のマイカーでなぜ可能なのか? と思うだろうが、ガソリン代を頭数で割った程度の料金、すなわち運転手が儲けを出さなければいい、というわけなのだ。