瀬口:実はこれって中国古典に書いてあるんです。皇帝が立派なリーダーになるための教科書である『書経』という有名な中国古典があります。『書経』の一番最初に「放勲欽明、文思安安」という言葉があるんですね。「放勲」というのは勲功を放つ、つまり手柄=実力を示すこと。昔だったら武力だし今だったら経済政策。「放勲欽明」で、政策や経営を見事に成功させるような優れた実力を持っていることが明らかである、という意味になります。

 「文思」というのは、政策立案だとか哲学思想を考える能力ですよね。「安安」というのは、みんなを安心させるために一生懸命考えてあげられる深い思いやりや優しさ。すなわち政策の優れた実行能力とみんなに対する深い思いやりの2つを兼ね備えて、初めて立派なリーダーといえるというのが、中国の古典的な思想です。日本のリーダーたちも古来これを教科書に帝王学を学んでいたんです。その本質は、やっぱり実利重視なんですよね。

 「正徳利用厚生」というリーダーが重視すべき基本的な考え方があります。「正徳」は徳に基づいて考えること。「利用」というのは金融、財政、産業政策等をきちんとやること。そして「厚生」というのは民を幸せにするということで、これも『書経』の言葉です。各国のリーダーたちはこれを真っ正直に愚直にやればよかった。それを資本主義とか市場メカニズムだとか自由貿易とか、中間目標のイデオロギーにとらわれ過ぎて、最終目標の実利から目が離れたというのが今の欧米諸国に共通する問題なんです。

山田:なるほど。

日本人はもっと頑張れる!

瀬口:日本はたまたまそれを許さない国民が多かったので、そこに移らなかったんですね。それで助かったんです。

 これは日本国民の力だと思うんです。日本はせっかく1億3000万人の教育水準が高い人がいて、経済もある程度豊かで、こういう特殊な文化を持っている。だからこそ、世界に貢献できる時代が来たんです。21世紀は雇用と税収を生んであげることですよ、相手の国で。自国のための政治利用じゃなくて相手の国のことを純粋に考えて支援してその国の経済を活性化できるのは日本だけなんです。

 外国に対する経済援助を考える時、アメリカも中国もヨーロッパも、基本的にはみんな植民地経営型の発想なんです。自分の国の利益ためになるためにどうするかを第一に考える。でも、日本だけは本当に愚直に相手国の発展のためにやっちゃうんです。昔は中国に対しても、相手の発展のために散々やっていたんです。今は中国が感謝をしなくなっちゃったように見えるので、やって損をしたと思っている人がいっぱいいるかもしれないけれども、それぐらいのことでやめちゃいけないです。もっとやってあげればいいです。

山田:どういうビジョンを持つかということですね。

瀬口:そうなんです。相手が何を思おうと、自分のビジョンを貫くのが日本の美学なんですよ。だから、中国が強くなったからやってあげないとか、そんなのは了見が狭い。それは君子じゃないです。

 僕は日本人が世界のためにもっと頑張れると信じています。その頑張れる舞台が用意されたような感じがするんです。

山田:本当にそう思います。

瀬口:日中関係でいえば、尖閣諸島問題が起きて、落ちるところまで落ちました。そういう意味では本当にひどいボトムをその頃に嫌というほど味わって、そこからじわっと今は上がってきていると思うんです。

 今年はたぶん日中関係もよくなってくるし、それからいろいろな日本国内の政治状況も、安倍さんが総理になって安定している。安倍さん自身が政策面ですごい行政能力を持っているというわけではないですけれども、政治基盤は長期的に安定していますよね。だから、毎年総理が変わった時代とは全然違って、どんどん政策が前に進んで行きますよね。

 これっていうのも天命かなと思っています。安倍さんにはなるべく長い間総理をやってほしい。つまらない政治のことにはとらわれずに、とにかくまじめに政策運営に取り組んで、世界のために貢献できる日本の基盤をみんなでつくっていく。

山田:安定基盤はできたので、次は瀬口さんがおっしゃるビジョンを持った人に出てきてほしい。そろそろそういう時期だと思うんですけど。

瀬口:日本にはビジョンがないと言ってないで、みんなが自分のビジョンを勝手に発表すればいいんです。僕も覚悟を決めてやろうと思っているんですけれども。

山田:是非、日本のため、中国のために頑張ってください。