イデオロギーではなく実利重視へ

 大企業の経営者たちに、何でそれしか給料をもらわなくていいんですかと聞くと、いや、こんなにもらっても使えないよと言うんです。それはうそです。本当は使おうと思ったらすぐ使えるんです。例えば夏休みに自家用ジェットでドバイに行って1泊300万円の部屋に家族で泊まって、食事のたびに1本100万円のワインを開けてゴージャスに過ごす。夏休みだけで数千万円はすぐなくなるわけですよ。

 ただそういうお金の使い方を幸せだと思わないという日本文化の中に生きているから、そんなお金をもらってもしょうがないでしょうと言う。日本の文化そのものがそういうものを幸せと思わない文化なんですよね。

 実は、この文化が世界を救うのではないかと僕は思っています。先進国で象徴的に現れており、このままいったら中国でも同じことが起きそうな問題は、イデオロギーを重視し過ぎて、国民の実利を軽視するということです。

 イデオロギーと言うと、社会主義だとかイスラム原理主義だとかキリスト原理主義といった思想宗教みたいなものを指すのが日本では一般的だと思うんです。けれども、最近欧米社会の中で批判をされているのが、自由貿易、資本主義経済、市場メカニズム、規制撤廃などを無批判に正しいと考える考え方、そういうイデオロギーが批判されています。

 西側先進国ではレーガン、サッチャー時代からそういう考え方に基づく政策が国を繁栄させる、それが一番いいんだというふうに信じ込んできた。当時は、それが明るい希望をもたらした部分もあった。でも、その政策を30年続けてみて今のアメリカ社会を見たときに、97%の人たちの所得が30年間変わってない、上位3%の人たちだけが豊かになっている、これがその結果です。イデオロギーを信じてきたけれども普通の人たちはみんな全然幸せになってない。これでいいの?というのが、今のトランプ大統領やサンダース氏を支持している人たちの思いなわけです。

 じゃあ、トランプ政権になって修正されているかというとそんなこともない。昨年末に可決されたアメリカの税制改革法案、これはどちらかというと金持ち優遇です。エスタブリッシュメントの人たちが行政をやっているはずですよね。世界中から注目される企業経営者の人たちもいるはずですよね。それにもかかわらず、大半の国民が不満を抱いている問題に対して何のソリューションも出てこないわけですよ。平気で逆方向に向かっている。

山田:どこかに解決策があるかということですよね。

瀬口:これは米国社会の末期症状ですよ。それが、日本にとっての最大のパートナーなわけです。日本は今まではずっとアメリカに遠慮していた。太平洋戦争の敗戦国だということで、世界に対しても情報発信はすごく遠慮、控えめだったんですけれども、今こそもっと日本が貢献しなくちゃいけない時代が来ていると思うんです。まず一番悩んでいるアメリカとこれから悩む中国のこの2大国を、日本が助ける。

 すでにトランプの変な要求に応じるという形ではありますが、日本企業がアメリカの中で4000万人の雇用を生むという約束をしてやっていますよね。もっとやってあげたらいいですよ。米国で1億人ぐらい日本の企業が雇用を生み出すと。その代わりそれに応じた市場シェアをもらうよ、利益をもらうよ。でも、アメリカの従業員が伸び伸びと仕事ができるよう、製造業を復活させてあげるから日本企業に任せろと。

 中国は商人として売るのはうまいけれども、技術革新だとか研究開発だとか生産管理だとかサービスのきめ細やかさだとかはあまり得意じゃない。そこはもう日本に任せてくれと。世界戦略をあなたたちが考えてくれ、そして一緒にやろうといったら、中国企業は一緒にやりますよ。

 そうしたら中国も強くなる、アメリカも強くなる。そこで成功したら、ほかの国だって日本企業に来てほしいですよね。そうしたら日本企業は全世界に行って、各国のために雇用を生み出し税金をきちんと納付して、従業員の幸せ、安心・安全、自己実現を重視する経営を実践して社会を安定させるという活動を、全世界に広めていく。そういうチャンスが今は来ているんじゃないかなと思います。イデオロギー一辺倒じゃなくてきちんと社会全体の実利を重視して実践するという考え方へと転換する時代が、今は来ているんじゃないかと思う。

山田:なるほど。