山田:故郷に行っても仕事はあるけど賃金は少ない。かといって食料品の値段がぐっと安いかというとそんなことはない。都会で給料が少なくなったといっても3000元もらえるのが、田舎に行ったら1200元しかもらえないので面白くもない。

 というようなことで上海の状況は、1年前と何も変わってないんだけどやっぱり戻ってきちゃう。ちょっとこの層の人たちがさまよい始めているというような現象を見ているものですから、マクロの話を伺うと、あ、そういうことなのかと興味深く思いました。

瀬口:政府が実施する政策による調整よりも人間の調整能力ってはるかに高いですね。

 だって、信じられない調整能力ですよ。ずっと工場で30年働いていた人がクビになりました。そこでeコマースの宅配業をやれと言われたって、普通はできませんね。

山田:できません。

瀬口:でも家族を養うため、子供を大学に入れるためと、話を伺うともう本当に涙が出るくらい努力をしていますよね。

 その家族への想いで人間ってがっと変われる。工場の経営者に会社全体でそんなことをやれといっても絶対に無理ですね。でも、個人だとできちゃうんですよね。それが産業構造の転換の受け皿になるんですよ。

山田:産業構造の転換か。今はまさにその渦中。

40歳を過ぎると職探しは難しい

瀬口:でも、仕事を変わらされる本人は地獄です。社会の構造転換の速さって、本人にとってみんな地獄のような苦しみですよ。でも、まだ食っていけるんですよね。

山田:ただ、実は宅配業は人によっては嫌がるし、また年齢も若くないとできないんです。例えば私の友人なんかは、危険だからと家族が止めろと言うんです。時間の勝負なので、とにかく早さを求められて、危険なんですよ。

瀬口:そういうのがあるんですね。

山田:この人たちが出てきてから、道を歩くのも危なくなってきました。衝突事故などもいっぱいあるので、やっぱりけがもするわけです。

瀬口:こういう話は生で聞かないと絶対に分からないですね。

山田:それと老眼なんかが入ってくると、スマホの画面も見にくいですよね。配達情報を見るなどこの仕事はスマホが必須なので、スマホが見にくいようだとやっていけない。

 中国が経済成長で仕事があるといっても、40歳以上になるとぱったり職探しは難しくなるんです。というのがあるので、職はたくさんあるから大丈夫かといわれると、僕なんかはまったくそうだというふうにも思えないというところはあるんですよね。

瀬口:そうか、40歳過ぎてもできる仕事ってそうですよね、少ないですもんね。

山田:そうですね。ユニクロなんかでも募集しているのは35歳までだし。

 ですから本当に35歳を過ぎると、なかなか学歴のない人が職を探すというのが難しくなってきて。あるとなると掃除、あとはレストランのウエーター。そうなると、やっぱり月給は相変わらず3000元から3500元ぐらいが上海なんかでも上限。

 その辺のところで産業の転換期と言われるとそうなんですが、彼らはそういう中で必死になっても、職が見つからない人は見つからないだろうなとは思います。

瀬口:職はゼロではないけれども、いい職が見つからない。ほかの発展途上国はそこで飢えてしまうけれども、中国はそうならないのが他国との違い。

山田:本当にそうです。そこが中国ではいまひとつ頑張らない人が出てくるところの理由かなと思うんですけど。都市だと餓死するけど田舎だとなかなか餓死はしないですよね。魚や野菜など何か食べるものがある。

瀬口:しかも、本当に生活レベルを落とせば生活費は安いですしね。

山田:本当にそうですね。彼らも田舎に帰って現金収入はほぼなくなるんですけれども、じゃあ、飢えているかというとそうじゃないので、おなかも特にすいていない。そういった話を知人から聞きました。

(以下、明日公開の3回目に続く)