荒療治は場所を選ぶ

瀬口:ただ社会的には不安を呼び起こします。成長しているときであれば何とか仕事が見つかるんですけれども、成長が止まった後にそれをやると、仕事が見つからない人が増えて社会不安が大きくなります。

 だからいつまで荒療治が続けられるとか、もしくはどこの地域なら荒療治ができてどこの地域はやっちゃだめだということが重要です。例えば今は、武漢とか重慶とか成都だとか深センだったら荒療治をやっても大丈夫だと思います。いくらでも周りに仕事がありますので。

 でも、同じことを深刻な構造不況に苦しむ東北地方のハルビンだとか瀋陽だとか……。あっちでやったらパニックが起きますよね。

山田:場所を選ぶということですね。

瀬口:場所は慎重に選ばないとだめですね。

 その中間が北京、上海などです。北京、上海、深セン、天津、広州などでは、職があるないにかかわらず、市街地中心部の住宅を買いたい人たちが多くいます。そういうところに貧しい人を住まわせておくというのがどうなのかというのはある。だから少し郊外に移ってもらうようにする。

 そのときに荒療治だけだと貧しい人たちが本当に困っちゃうので、少し優しくいろいろな補助金を付けてあげるとかちゃんと代替の住宅をあげるだとか、職をある程度探してあげるだとかいうようなことをやっていく。その1つが、雄安新区(新たに建設される経済特区。北京から約100kmに位置し、東京都とほぼ同等の面積の規模が予定されている)の開発プロジェクトだと思うんですよね。

山田:雄安新区はありますが、その辺のケアはほとんどやってないですね。仕事を見つけるとかは。

瀬口:今はまだ7%近い成長率なので。

山田:勝手にやれというんですか。

瀬口:勝手にやれと言っても、おそらく社会不安は起きないんじゃないかと思うんですよね。ただし、やられている本人は、めちゃくちゃ大変ですよ。

山田:そうですよね、当事者は。

瀬口:だって本人にしたら、景気がいい悪いは関係なく地獄に落とされるようなものですから。住んでいるところを出ていけと言われるでしょう。慣れ親しんできた職も失うわけでしょう。それはもうめちゃくちゃ大変ですよ。

 のた打ち回って苦しんで、結局はeコマースの宅配業をやったり、もしくはちょっとお金があれば車を買って、ライドシェアをやったりとか。今は山のように仕事はあるので、それで何とか吸収されているという感じです。

山田:私の知り合いの上海に住んでいる農民工の人々は、おととしぐらいから上海から追い出されはじめました。彼らは郊外で何とか家賃が1万円ぐらいのところに住んでいたのが、家賃を倍にします、3倍にしますと言われた。

 といってここ1~2年ぐらい、この人たちの給料って上海だと頭打ちなんですね。頭打ちどころかちょっと下がってきているというのが実情で、もう住めないということでいったん自分の故郷に帰る、ほかの都市に行くという現象が起きたんですね。ところが、1年たったらみんな帰ってきたんです。

瀬口:帰ってきたんですか。

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