山田:日本の経営者は中国には行かないけど、アメリカとかヨーロッパには行くんですか。

瀬口:年5、6回行く人は多くないはずです。

山田:それも行かないですか。

瀬口:グローバル市場の最前線でマーケティングをやっている経営者は多くないはずです。部下から与えられた情報の範囲内で経営を行っているだけだと思います。

山田:そうなんですか。

瀬口:たまたま中国ではなく欧米だけで成功している企業もあるかもしれません。しかし、中国に年に1~2回しか足を運ばないと言っている社長はたぶんどこの国もみんな1~2回ぐらいずつの人が多いと思います。

山田:隣にせっかくマーケットがあるのに残念ですね。

所得の再分配は荒療治で

 もう1つ、是非お伺いしたかったのは、所得の再分配についてです。

 秋に開催される三中全会(第三回中央委員会総会)で具体的な方策が出てくるんじゃないかというふうにいわれていますが、基本的には所得の再分配で、みんなを底上げをしていこうと、習近平が強調しています。一方で、最近は北京で農民工など低所得者たちが住んでいるところを壊して追い出しにかかっているようです。上海でもその傾向があります。

 所得の再分配ということを言うんですが、現実を見るとどうもそれと逆行をしているようなことが今の中国で起こっているように思います。本当に所得の再分配をしていかないと中国は国の運営が難しい。いくら経済が好調でも不安定要素の1つにはなると思うんです。その辺のところはどのようにお考えですか。

瀬口:僕はやらざるを得ないと思います。やらなかったら共産党がひっくり返る。

山田:そうですよね。

瀬口:だから、何が何でも僕はやるんじゃないかなと思うんです。ただ、そのときのやり方が必ずしも優しいやり方ではないかもしれません。荒療治。

山田:荒療治ですか。

瀬口:だから、北京や上海の市街地中心部から貧しい人は追い出す。

 例えば日本でも千代田区1番町、2番町、青山や表参道に、貧しい人はたぶん住んでないですよね。それと同じようなことが起きるのかなと思います、それも早く。

 日本はゆっくりとそうなっていったと思うんですね、何十年という時間をかけて。中国ではそれが3倍とか5倍のスピードで起きますから、気の毒な方々が追い出されるといった光景が出てくると思います。ただ、どこの国でも大都市中心部というのは貧しい人たちは住みにくい。お金持ちはもっとお金を出しても住みたいから、どうしても貧しい人はそこから排除されちゃいますよね。

 そのとき、そういった人たちが職を失わないでちゃんと生活が成り立つようなソフトランディングを、政府が考えてあげられるかどうかというところがすごく重要なんです。たぶん中国はそんなには優しくないかなと。「自分で探せよ」となるんじゃないかなという気がします。

山田:なるほど。

瀬口:実はその方が職探しは早いんです。自分で何が合っているかというのはなかなか分からない。ただどん底まで追いつめられると、多くの場合、ぎりぎりのところで自分に合った仕事を探すんです。

山田:荒療治というのはそういうことなんですか。

瀬口:そうなんです。実はマクロ的にはその方が産業構造転換が早く進みます。

山田:そうなんですか。

(撮影=瀬口清之)
(撮影=瀬口清之)

次ページ 荒療治は場所を選ぶ