経営者自身が現地を見て判断すべき

瀬口:ところが、そういう時代は1980年代に終わって、バブルが崩壊した90年代から日本は長期停滞の時代に入った。そのころから今度はグローバル化が、ちょうど同じタイミングで進んでいったわけです。また2000年代に入って中国が台頭してきて、グローバル化がますます進んで、日本の地位はどんどん落ちていった。これは当たり前で、グローバルなマーケットで勝負をする仕方が分かってない経営者が、隣に強敵が現れてきたら勝てるわけがないです。

 というのが多くの日本企業の問題ですが、例外はあります。それは自動車業界。トヨタ自動車もホンダも日産自動車もグローバル市場でばんばん売っていますから彼らは分かっているわけです。もしくはユニクロや良品計画、それにコマツやダイキン工業。世界のマーケットを分かっているので、勝負をする仕方も分かっているし、海外に人も送る。

 そういうメーカーって世界の最先端に目をつけていて、例えば今ならシリコンバレー。あそこの技術に目をつけて、日本の中にどんどん取り入れて勝負をしようとしている。

山田 泰司
山田 泰司

山田:なるほど。

瀬口:結局、シリコンバレーでも中国でも、優れた経営者は目のつけどころが違うわけです。現在は80代の大変立派な方で、もう経営の第一線は退いたんですが、私がいつも教えを請うている大経営者の方がいらっしゃるんですけれども、その方にストレートに質問をしたんです。盛田昭夫さんや松下幸之助さんが現役ばりばりだったときに、今のように中国のマーケットがいきなり出てきたら普段どこにいると思いますかと聞いたら、「日本にいるわけないじゃないですか」と言うのです。

山田:面白いですね。

瀬口:中国にいるに決まっていると。実際、例えば以前のローソン時代の新浪剛史さんとか、ユニチャームの高原豪久さんとか有名な経営者で、中国にずっと入り浸りだったという人がいっぱいいるんです。かつて日産が中国に進出したころは、あの忙しいカルロス・ゴーンさんですら年に5、6回中国に行っていたそうです。

山田:そうなんですか。

瀬口:経営者はやっぱりめりはりが必要で、ゆっくり動くマーケットだったら、誰かに任せておいても報告を受ければイメージは持てるわけです。中国なんて3カ月でマーケットは変わるじゃないですか。

 留学生が半年前に上海から日本に出てきて、半年ぶりに中国に戻ったら、レンタルバイクが流行っていて、どうやって使っていいのか分からないんですよ、と言うんです。中国人自身が半年で分からなくなるマーケットだから、日本人の経営者が行かなきゃ分かるわけがないですよね。

 そういうのを分かっている経営者が少ない。実際日本の経営者のほとんどは行っても年に1~2回ぐらいです。

山田:今でもそうですか。

瀬口:今でもそうです。

 ちなみにホンダは今の社長も副社長も中国で、現地で社長をやっていた、もしくは役員をやっていた人です。コマツは、優秀な中国人が現地にいて、彼には社長、副社長とホットラインがあるので、いつでもすごい情報がリアルタイムに入れられる。トップはすぐにそれを理解するという状況になっているんですよね。

 そういう会社じゃないと、今は勝負にならない。それは、アメリカ企業もヨーロッパ企業もみんなそうやっているんですから。

山田:そういう会社はイコール伸びている会社ですか。

瀬口:確実にそうです。

 だから、やっぱり日本はプロの経営者を育てなきゃいけない時代にあります。グローバル化の時代、自分の国じゃないから相手が何を欲しているか、どれぐらいの値段で作れるのか、どうやって売るのか、3つとも日本にいたら絶対に分からないはずなんですよ。やっぱりマーケティングをちゃんとやっていかないと駄目なんです。

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