毎月のように中国を訪問して経済の実態について調査しているキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏に今後の中国についてお聞きする第2回。前回、日本企業が中国で成功するワケを明らかにした瀬口氏。今回は、その中国で進むと考えられる産業転換構造などについて聞いた。

(前回の記事「日本企業が欧米企業よりも中国で成功するワケ」から読む)

山田:私は、香港に8年住んで、その後で上海に移りましたが、香港に駐在している人が言っていたんです。本社に報告を上げるんだけど全然聞いてくれないと。これは地域的なことがあるのかなと思ったんです。要は本社が1番で、次はアメリカが2番で、次はロンドンで、次がという感じで。

瀬口 清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1982年、東京大学経済学部を卒業、日本銀行に入行。2004年、米国ランド研究所に派遣(International Visiting Fellow)。2006年に北京事務所長、2008年に国際局企画役。2009年からキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。2010年、アジアブリッジを設立して代表取締役に就任。2016年から国連アジア太平洋食品安全プロジェクトシニアアドバイザーを兼務。(写真=吉成大輔、以下人物写真同)

瀬口:出世コースの順番ですね。

山田:そのようなことも関係しているのかなとは思うんですが、とても不思議だったんです。海外で売ろうとして、そのためにわざわざコストを掛けて海外に拠点を置くわけですよね。本社から人を送るわけですよね。だったら、その駐在の人が言うことをなぜ信用しないんでしょう。

瀬口:信用できる人を送ってないからです。

山田:それはどういうことですか。

瀬口:中国市場で本気で勝負をするんだったら、社長もしくは副社長もしくは専務が腹心の役員級幹部を送らなくちゃいけないじゃないですか。でも、実際に送られているのは部長級だとか課長級で、社長や専務と直接話をするときに遠慮をしなくちゃいけないような人を送っていることも多いんですよ。

 だから本気じゃないですよ、経営姿勢が。そんな経営ってうまくいくわけがないじゃないですか。それを理解できない経営者が多いというのが、多くの日本企業の共通課題なんです。つまりグローバル市場で堂々と勝負できるプロの経営者が少ないということなんです。

 みんな事業部の中で今までは育ってきた。かつての高度成長期には、各事業部がどんどん作れば売れたし、しかも日本のマーケットは大きかった。世界の中でもちょっと前までは2番目に大きいマーケットだった。こんな大きいマーケットを持っている国は、ほかにほとんどなかったわけです。だから、日本の中だけでも十分勝負ができた。

 その中で、研究開発の人も生産ラインの人もある程度は、日本ならこれぐらいのものであれば売れるなとか、これじゃ高いよなというのが分かるわけです。これまでの経験から、これぐらい努力をすればこれぐらい値段は下がるなというのが、日本を前提にすればわかっている。そうすると新しい知識を入れなくても市場が拡大していけば、ある程度は売れるという状態が続きますよね。

山田:高度成長期の日本はそうだったわけですね。