マーケティング力が低いのが大問題

瀬口:日本企業って多くの人が自分の会社しか知らないじゃないですか。しかも、自分の事業部しか知らないという人もいっぱいいます。

 一方で、欧米の経営者は結構ヘッドハントでいくつもの会社を渡り歩いているじゃないですか。そもそも社長の仕事というのはどういう仕事か、マーケティングってどういう仕事かというのが、複数の企業を経験してプロとして分かっているわけです。でも、日本の社長は、1つの会社にいて、しかもある事業部にずっといて偉くなることも多い。例えば家電部門で偉くなってくるとか半導体部門で偉くなってくるとかインフラの重電部門で偉くなってくるとか。そして偉くなっていって最後に社長になるわけです。ほかの部門の技術的なことはあまりよく分かってなくて、自分の事業部しか分かっていない。なおかつほかの会社の経営の実態も知らない。

 だから、会社の経営をやるときに、何を押さえたらその会社がうまく回るのかという一般的な経験が足りないですよね。たまたま出身の事業部が伸びるときは成功するかもしれません。ただ、例えば重電一筋でやってきた人が突然半導体が伸びる時代に来ちゃったとか、もしくはITの時代に来ちゃったとかいうと、どうしたらいいかさっぱり分からないわけですよね。これじゃあ勝負にならない。

 それともう1つ。やっぱり企業って売ることが目的じゃないですか。お客様のニーズに合った製品を売って初めて技術が生きます。それはビジネスの基本なので、普通は何が売れるのかというマーケットのニーズをきちんと把握して、そのマーケットのニーズが分かったらそれに合わせて研究開発をやって、お客様が買ってくれるような生産コストまで下げて、そのうえで消費者の嗜好の変化が分かるような販売網をつくって売っていくわけですよね。

 だから、市場の最前線にいる人が、どういう研究開発が必要で、どういう値段が必要で、どういう売り方が必要だというのを分かった上で、関係各部門に向けて指示をするというのがマーケティングなわけです。一方、日本ではマーケティングをやっている人のことを「営業」というじゃないですか。営業って自分の決まったお客さんのところに御用聞きに行くだけですよね。だから営業はマーケット全体を見てないです。自分の製品が過去に売れた人しか見てない。

山田:なるほど。

瀬口:例えば重電の火力発電の事業部の人が、東京電力や関西電力に行きますよね。東京電力の中には重電に携わっている人以外に、電力を毎日チェックする検針員の人がいます。ただその人たちがどうやって検針をして料金を回収しているかというのは知らない。

 もしくは、東京電力が今度は自社の専門とは違う分野で発電をやろうとしているのなどが分かってない。どうやって内部のITや人事を管理しているかというのも知らない。単に自社の火力発電所を買ってくれる人のところに行って、営業しているだけです。

 でも、本来ならマーケティングをやる人だったら電力業界全体を押さえることが必要。もしくは自分の業界に関係する技術のところを、その重電のみならず、ロボットだとか自動車だとかを業界横断的に幅広く見て、自分の闘える分野を探してきてそこに合わせた製品・サービス開発を研究開発部門にやらせて、どんどん市場の開拓をするというのがマーケティングなんです。ただ、日本の営業マンにそれをやれと言っても普通は無理ですよね。他部門を指揮する権限が与えられてない。

 そもそもそういう教育を受けてない。経験もない。ほかの会社のことを知らない。自社のほかの事業部のことも知らない。それじゃあやっぱり勝負にならない、ということに気が付いてないです。

(以下、2回目「今なら中国の貧困層を追いつめてもまだ耐える」に続く)