「主席お薦め」便乗キャンペーンがない理由

上海市内の書店。「習主席の賀詞で注目! 必読のX冊」というようなコーナーは皆無。うち1軒の新刊・注目本のコーナーには、日本事情を紹介するので有名な雑誌「知日」が目立つ場所に並んでいた。特集は「富士山 牙白!(ヤバい!)」と「生まれてすみません 太宰治」

 目ざとい書店が、ここにリストアップされた本をかき集めて、「習主席の賀詞で注目! 必読のX冊」というようなコーナーを設けているのではと思い、上海で品揃えが充実している書店を3軒、回ってみた。ところが、そのようなキャンペーンをやっている書店は皆無。リストにある本は大半が棚に埋もれていて、探すのも一苦労という有様だった。

 うち、学術書・教養書の品揃えでは上海で一番だと私が思っている書店では、入り口すぐの場所にある新刊・注目本のコーナーで最も目立っていたのは、日本事情を紹介することで有名な北京の雑誌「知日」で、表紙には巻頭特集のテーマ「富士山 牙白!(ヤバい!)」と「生而為人、我很抱歉 太宰治」(生まれて、すみません 太宰治)の文字が躍っていた。

 中国の書店では、一時期、装丁を豪華にして1セット30万元、40万元(1元=約18円)といった高額の値をつけた中国古典シリーズなどがよく店頭に並んでいた。当時、誰が買うのかと思って書店員に尋ねたら、事務所や自宅のリビングの立派な本棚に並べる本を何にしようか困っている企業の社長が買っていくと話していた。こうした豪華本も、最近ではほとんど見かけなくなったが、ぜいたくを禁止し、腐敗幹部の摘発を進める習氏の政策が影響しているのは間違いない。習氏が国のトップに就任する以前の中国であれば、「あなたの社長室に国家主席の風格を」などと銘打って、主席の執務室に並ぶ本をまとめて高額で売る書店もあったかもしれない。

上海最大の書店の政治書コーナーで、ようやく目立つところに置かれているのを見つけたキッシンジャー著「世界秩序」

毛沢東も本を愛した

 さて、中国の指導者と蔵書というと、歴代の指導者で読書家で知られていたのは毛沢東。側近らの手記には、中南海にあった自宅のベッドの半分には本が置かれてあり、空いた時間は常に読書していたなどとの証言がある。読書する毛沢東の様子を知りたければ、一時期、毛沢東の蔵書を管理していた人物が書いたその名も「毛沢東的読書生活」という本が北京の三聯書店から出ている。線装本がぎっしり詰まった書棚や、本の余白に感想や疑問を書き込んだ毛沢東の自筆を写した写真もふんだんに掲載されいて興味深い。

 1986年、当時の最高実力者、鄧小平の筆による題字で初版が出版されてから今年で30年。2009年に新装版が出るなど、ロングセラーになっている。中国の庶民も指導者の本棚の中身に関心を持っていることの証左だろう。サイマル出版会から日本語版も出ている。現在品切れだが、アマゾン等で手軽に古書を手に入れることができるようだ。