社内報で紹介された鴻海会長の愛読書
ゴウ氏は鴻海、そしてシャープをどこに導こうとしているのか。それを知る手がかりになりそうなものを見つけた。ゴウ氏の愛読書である。
「鴻橋」という名前の社内報がある。鴻海は製造拠点の大半を先に挙げた河南省鄭州をはじめとする中国に置き、同国内に100万人超の従業員を抱えている。鴻橋はこれら中国の従業員向けに中国の製造子会社フォックスコン(富士康)が出している社内報だ。中国のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)最大手Wechat(微信)で配信しており、社員以外にも公開している。この社内報がちょうど1年前の2016年1月6日付で、「成功したければこれを読め! 郭台銘総裁の愛読書10冊」と題した記事を配信している。
記事はまず、「郭総裁が超多忙な日々を過ごしていることは、地球の人間なら誰もが知っている。しかし、総裁に特別お気に入りの趣味があることを知る人は少ない。それは読書だ」とし、ゴウ氏が無類の読書家だと紹介。その上で、愛読書の中でも座右の書としてゴウ氏が古典と認識している10冊のリストを示している。すべて作者の欄には欧米人の名前が並んでおり、中国語訳した上で中国で出版されたものが紹介されている。
欧米で話題になったものが多く、10冊のうち9冊は邦訳され日本でも出版されているので、日経ビジネスオンライン読者のビジネスパーソンなら読んだことがある本も少なくないはず。日本経済の今後にも少なからぬ影響を及ぼすだろうテリー・ゴウという経営者を知る貴重な資料として、社内報が示した本の内容の説明の一部とともに紹介してみよう。
(1)『Industry4.0』
(邦訳なし)
(中国語題・工業4.0)
Ulrich Sendler著
ドイツ南部バイエルン州フェルダッフィングでインダストリー4.0を提唱する作者が、中欧が2030年の時点でいかにしてグローバルな工業基地としての地位を保ちうるかを科学と経済の角度から検討した書。
(2)『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える(東洋経済新報社)』
(原題・Work Rules !)
(中国語題・Google超級用人学)
ラズロ・ボック著
クリエイティビティを発揮し続ける社員を生み出す、革新を続ける企業のルール。
(3)『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える(講談社)』
(原題・Big Data; A Revolution That Will transform How We Live, Work)
(中国語題・大数据時代)
ビクター・マイヤー・ショーンベルガー、ケネス・クキエ著
ハーバード、オックスフォード、エール等世界の有名校で教鞭を執った第一人者が説くビッグデータの時代と商用化。
(4)『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる(日経BP社)』
(原題・ Great by Choice: Uncertainty, Chaos, and Luck--Why Some Thrive Despite Them All)
(中国語題・十倍勝、絶不単靠運気)
ジム・コリンズ、モートン・ハンセン著
著者の研究チームが9年の歳月を費やし、2万400社の米国企業の中から、不確実かつ混沌とした時代に、他の企業よりも10倍以上の成長を遂げている「10X」の企業7社を選び出し、成功の秘密を解き明かす。「10X」から中国語題の「十倍勝」がつけられた。
(5)『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則(日経BP社)』
(原題・Good to Great: Why Some Companies Make the Leap...And Others Don’t)
(中国語題・従A到A+)
ジム・コリンズ著
社内報では、米誌「ビジネスウィーク」、米誌「ハーバードビジネスレビュー」等で2001年の賞を総なめにしたロングセラー、とよく売れた評価の高い本だとだけ説明。そこで邦訳を出版した日経BP社の説明を抜粋すると、「一見地味な11社を選び、GEやインテルを上回る実績を残した要因をリーダーシップ、人材戦略、企業文化等から分析、良好な企業が偉大な企業へと変貌する必要条件を示す」とある。
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