●球田コンサルタント:「営業目標を達成しなくてもいいのなら、誰でもできますよ。ヒットを打たなくてもいいなら、誰でも野球選手になれます。しかし目標が言い渡されているわけですから、適性を重視したほうがいい」

○子犬課長:「営業に適性があるだなんて」

勝つ人には適性がある

●球田コンサルタント:「当たり前じゃないですか。勝負をするのですよ。野球選手にも営業にも何にでも、勝つための適性があります」

○子犬課長:「野球選手の適性って、何でしょうか」

●球田コンサルタント:「野手であれば『選球眼』です」

○子犬課長:「打撃のセンスかと思っていました」

●球田コンサルタント:「野手を評価するための最も重要な指標は出塁率ですから」

○子犬課長:「以前お聞きました。打率ではなく出塁率だと」

●球田コンサルタント:「統計データで分析すれば分かります。得点につながるのは、打率より出塁率です。出塁率を上げるために最も大事なのは……」

○子犬課長:「ボール球を振らない。だから選球眼」

●球田コンサルタント:「その通りです! ボール球を振らない、ということになると、ピッチャーにとって、すごくやりづらい相手になります」

○子犬課長:「ボールが先行してしまったら、やむを得ずストライク狙いで甘い球を投げてしまう。選球眼があれば打率も高くなるわけですね」

●球田コンサルタント:「打撃センスもあったほうがよいのです。ただ、打撃センスはトレーニングで磨いていけます。それに対し、選球眼のほうは適性の度合が強いです」

○子犬課長:「選球眼をどうやってチェックするのですか。眼球の動きとか、何かでテストするとか」

●球田コンサルタント:「私は実績データしか信用しません。それまでの数字を見て、彼は選球眼がある、と見込んだらスカウトするわけです」

○子犬課長:「選球眼を示すデータって何でしょう」

●球田コンサルタント:「ボールゾーンスイング率という指標があります。ボール球に対し、どれぐらい振ってしまったか、という数字です」

○子犬課長:「なるほど。お話を聞いていると、営業でも実績ある人をスカウトしろ、ということになりますね」

●球田コンサルタント:「当然です。新卒採用は駄目です。中途採用であっても営業未経験者は駄目。どちらも実績データがないからです。データ無しで雇うのは賭けに等しい。御社はギャンブルをしても潰れない大企業ではありません。そもそも10人も20人も営業をスカウトしたいのですか」

○子犬課長:「いえ、即戦力になる1人を採りたいのです」

●球田コンサルタント:「大リーグと同じです。私はスカウトをしていたとき、即戦力になる選手を選んできました」

○子犬課長:「となると、ボールゾーンスイング率のような選球眼を示す指標の営業版を用意するということになりますか」

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