●蝶野会長:「なるほど。ぜひ世界で勝負したいです」

○鷲沢社長:「今期の営業目標を達成させることはどうか」

●蝶野会長:「営業なのだから目標を達成するのは当たり前、だからモチベーションがどうのこうのではない、と社長は言っていました」

○鷲沢社長:「そうだ。目標達成が当たり前だと思っている営業はモチベーションなどいらない。ただし、当たり前だと思っていない営業ほど、『モチベーションが上がらない』とか言ってやるべきことをやらない」

●蝶野会長:「わかりました。目標達成するのが当たり前、そういう組織文化を作る。それが私の役割だと。モチベーションという言葉を使うかどうかはさておき、わかっていない営業への動機づけは必要ということですね」

○鷲沢社長:「自主性も相手による。何一つ自主的に動かない社員などいるものか。言われたこと以外、何もやらないなんてあり得ない」

●蝶野会長:「上から『自主性を発揮してほしい』と言っても意味がないわけですね。誰もがある程度の自主性を発揮しているから」

期待に応えない社員にどう対処するか

○鷲沢社長:「そうだ。社長が100のレベルを自主的にやってほしいと思っていても、部下が20ぐらいのレベルしか自主的にやっていなかったらどうする」

●蝶野会長:「わ、わかりません」

○鷲沢社長:「100のレベルをまず経験してもらう」

●蝶野会長:「どのように」

○鷲沢社長:「100のレベルで動けるまで強制しろ。自主的にやることを期待していても100を知らん社員は100をやらない」

●蝶野会長:「……強制!」

○鷲沢社長:「それをやり抜く強さが経営者に必要だ」

●蝶野会長:「ブラック経営者とか言われませんか」

○鷲沢社長:「無茶苦茶なノルマを与えるとか、注文がとれるまで家に帰るなとか、そういう話をしているわけじゃない。経営目標から考えて一人あたりこれだけはやってもらう、それが100だ」

●蝶野会長:「個人差も認めるのですよね」

○鷲沢社長:「もちろん。ただし、自主性を尊重するというと聞こえがいいが、下手をすると20のレベルの人を認めることになり、他の人まで20に下がってしまいかねない。だいぶよくなってきたがこの会社にはそういうところがあった。大リーグ仕込みのコンサルタントが似合うだろう。球田は厳しいぞ」

何事も体験しないとわからない

 私はよく『理解=言葉×体験』と講演などで話します。言葉だけでは伝わりません。体験をともなってはじめて理解できるのです。

 したがって「どうしてこれをやるのですか」と尋ねる人には「やればわかるから」と答えるようにしています。

 どんなに言葉を足しても、体験したことがない人は本当の意味を理解できません。

 どこまでやったら本当に目標が達成するのか。どこまで自主性を発揮したら上司が物足りないと思わなくなるのか。その体験をしなければ、わかりようがないのです。

 体験によって理解を促すために、時には「強制」も必要です。

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