「社内はCCメールの大洪水だ」

○鷲沢社長:「CCで来たメールにも返信していないか」

●獅子山課長:「CC? そうですね、なるべく簡潔に、『ありがとうございます』とか『受けとりました』とか『承知しました』とか、返しています」

○鷲沢社長:「誰に」

●獅子山課長:「誰って。ええと来たメールにはすぐ返信する習慣なんでそこまでは」

○鷲沢社長:「メールの送信先を確認していないのか。教えてやろう。君は全員に返信している。CCメールに『全返信』だ」

●獅子山課長:「……そこまで意識していませんでした。あの、何か問題が」

○鷲沢社長:「問題があるから来てもらった。課長の君がCCメールに全返信するから、君の部下も見習ったのかどうか、同じく全返信している。私も含め、社内はCCメールの大洪水だ」

●獅子山課長:「洪水って大袈裟な……。確か社内の研修で、来たメールには必ず返信すること、できる限り早く、と言われました」

○鷲沢社長:「だからなんだ。『言われたからやりました』『私が悪いのではなく研修が悪い』と君は言いたいのか」

●獅子山課長:「いえ、そういうわけでは……」

○鷲沢社長:「CCメールに全返信すると、どれだけの人の受信トレイに君のメールが届くか、わからないのか。気配りの達人なんだろう、君は」

●獅子山課長:「すいません、考えていませんでした」

○鷲沢社長:「もちろん返信すべきことがあったら、CCメールであっても返信してくれ。誰がどういう目的でメールを出しているのか、文面と宛先を読めばわかるだろう」

●獅子山課長:「わかりました」

○鷲沢社長:「そんな細かいことをなぜ社長が言うのかと思っているかもしれないが、CCメールは一例に過ぎん。気配りとはそもそも何だ。ルールとして決まってないこと、マニュアルにないことでも、相手を慮って臨機応変に対応することじゃないのか。『習慣ですから』『指示されたからやりました』とは違う」

●獅子山課長:「……はい、その通りだと思います」

○鷲沢社長:「不要なメールを出さないことも気配りの一つだ。営業課の中で無駄な仕事があったら率先して君から止めることも気配りだ。営業課長として、もっと他者に対する言動に気を遣ってくれ」

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