「喋りが長い人は気配りができない」
○鷲沢社長:「相変わらずだな。話が長い。社長から呼び出されたというのに、よくそこまでぺらぺら話せるな」
●獅子山課長:「あ、ひょっとして説教ですか。なんでいきなり」
○鷲沢社長:「私は君を『気配りの達人』だなんてまったく思わん。喋りが長い奴が気配りに長けているはずがない」
●獅子山課長:「しかしですね、社長が私に気配りの……」
○鷲沢社長:「もういいと言っただろう。君の喋りに火がつくと、なかなか消せない。しばらく黙って私の話を聞け」
●獅子山課長:「……はい」
○鷲沢社長:「気配りとは誰かに何かをしてやること。君はそう考えている」
●獅子山課長:「それはそうでしょう。だって――」
○鷲沢社長:「人の話を聞け」
●獅子山課長:「失礼しました」
○鷲沢社長:「やらないことが気配りになる場合もある」
●獅子山課長:「どういうことですか。何もやらないで、気配りって」
○鷲沢社長:「君は一日にどれぐらいのメールを受け取る」
●獅子山課長:「メールですか。多いですよ。数えたことはないですが100通ぐらい受け取るときもあります」
○鷲沢社長:「君は営業課長だ。お客様からのメールが多いだろう。どれぐらいだ」
●獅子山課長:「もちろん多いです。営業ですから。社長はメールなど使わずに直接お客様のところへ足を運べと仰いますが、メールだって重要なコミュニケーション手段です。この前もこんなことがありました。私が担当している……」
○鷲沢社長:「喋りに火をつけるな。同じことを何度も言わせないでくれ。質問に答えず自分が喋りたいことを喋る。それでよく『気配りの達人』だなんて言えるな」
●獅子山課長:「私が言ったわけじゃありませんよ。みんな私のことをそう呼ぶだけです」
○鷲沢社長:「だったらみんなの期待に応えて本当に気配りができるようになれ。とにかく質問に答えたまえ」
●獅子山課長:「わかりました。『お客様からのメールはどれぐらいか』でしたね。全メールのざっと半分、毎日50通くらいかと」
○鷲沢社長:「何社からメールをもらっている。社数で言ってくれ」
●獅子山課長:「社数ですか。お客様の?……うーん、10社……いや、1日に来るメールですよね……5、6社からかな……」
○鷲沢社長:「5、6社から合計50通メールが来ているわけか。1社平均10通か」
●獅子山課長:「さすがメガバンク出身、社長は数字で詰めてきますね。確かに多すぎました。お客様から毎日50通は来ないですね」
○鷲沢社長:「ということはお客様以外からのメールが70から80通あるわけだ」
●獅子山課長:「そうなりますね。そうだ、社内のメールが結構多いです。7割8割のほとんどは社内からかと」
○鷲沢社長:「社内メールをどう処理しているかね」
●獅子山課長:「すぐ返信していますよ。何事もクイックレスポンスが基本ですから」
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