「あのう、ロッカーの整理に戻っていいですか」

●柳本課長:「な、なんですか。社長」

○鷲沢社長:「全然、話が噛み合っていない。会話のキャッチボールができないのか、君は。私の言っていることに正対したまえ」

●柳本課長:「ですから高い赤ワインを飲み過ぎて酔っぱらっていたのですよ、あの社長は」

○鷲沢社長:「そんなことはどうでもいい! たとえゴルフに行く気がなくても、その場の雰囲気に合わせたらどうかね」

●柳本課長:「は? そう言われましても本当にゴルフはしませんし……」

○鷲沢社長:「相手と調子を合わせることもできんのか。大人の対応だろ」

●柳本課長:「大人の……ですか。よくわかりませんが」

○鷲沢社長:「なぜ、よくわからんのだ。ああ、イライラする」

●柳本課長:「あのう、ロッカーの整理に戻っていいですか」

○鷲沢社長:「話は終わっとらん! よくそんなコミュニケーション能力で営業課長が務まるな」

●柳本課長:「お言葉ですが好きで営業課長をやっているわけではありません。成り行きでこうなっているのです」

「ノリが悪いということは感度が鈍いということ」

○鷲沢社長:「ノリが悪すぎる」

●柳本課長:「は?」

○鷲沢社長:「ノリが悪いということは、感度が鈍いということだ」

●柳本課長:「私のことですか」

○鷲沢社長:「ようやく反応したな。感度が鈍いことをどう言うか知っているか。鈍感だ。君のような鈍感な人間が広告代理店の営業をしてきたとは信じがたい」

●柳本課長:「社長はまだ当社に来たばかりでご存知ないかもしれませんが、以前はもっとよくわからない人が営業課長をやっていました。どんな人がいたかというと……はは、これが傑作で」

○鷲沢社長:「私の話を聞け!」

●柳本課長:「そ、そんなに大きな声を出さなくても聞いています」

○鷲沢社長:「鈍感と言われて何も感じないのか、君は。だいたいロッカーの整理って何だ」

●柳本課長:「営業部にあるロッカーのことです。部内で購入した物品や資料が入っておりまして」

○鷲沢社長:「そんなことは聞いてないっ! なぜ営業課長の君がロッカーを整理するのか。私が社長に赴任してすぐ全員の業務を棚卸しした。部室の物品整理は課長の仕事から外したはずだ」

●柳本課長:「業務の棚卸しですか……」