「定年間近の私に、そんなプレッシャーをかけないでくれ」

○鷲沢社長:「昔と今は違う」

●竹虎常務:「『そこを何とかお願いします』と頼むと、『定年間近の私に、そんなプレッシャーをかけないでくれよ』と」

○鷲沢社長:「開き直っているのか」

●竹虎常務:「というより、あっけらかんとしています。アラ定の方は普通なら言わないだろうということを平気で口にします」

○鷲沢社長:「その無邪気さは見習いたい」

●竹虎常務:「『もう少しで定年だ、勘弁してくれよ。わかるだろう』なんて言われたら、私もどう言っていいかわかりません。先代の社長が生きていたら、ガツンと言えたのでしょうが。今では誰が話しても言うことを聞きません」

○鷲沢社長:「だから私が来週面談をする。普通なら部課長に任せるところだが、彼らに敬意を払ってそうするつもりだ」

●竹虎常務:「はい、ありがとうございます。それで、先ほどお伝えしたとおり、お手柔らかにお願いしたいのです」

○鷲沢社長:「お手柔らかにというのはどういう意味だ」

●竹虎常務:「来週、社長が2人と面談することは社内で噂になっています」

「私は相手の話をきちんと聞き、言い分を受け止めている」

○鷲沢社長:「どんな噂だ」

●竹虎常務:「いつものテンションで社長はあの2人とバトルするのか。それともさすがに今回はソフトな感じで接するのか、とか」

○鷲沢社長:「待て。君たちは私を勘違いしている」

●竹虎常務:「ど、どういうことですか」

○鷲沢社長:「誰かと話をするとき、私は相手の話をきちんと聞き、言い分を受け止めてから自分の意見を言っている。バトルを目的としているわけではない」

●竹虎常務:「そ、その……ご自身の意見を言うときに、相当激しく仰るじゃないですか」

○鷲沢社長:「たまにそういうことがあるかもしれんが、実際は滅多にないはずだ。社員とバトルしたいだなんて、思ったこともない」

●竹虎常務:「それではあの2人にはどのように言うつもりですか」

○鷲沢社長:「私が新しくやってきた社長だと改めて自己紹介する。相手はわが社の功労者だ。まず仕事に対する私なりの考えを伝え、相手のこれまでの仕事ぶりなどを聞く」

●竹虎常務:「え、それだけですか」

○鷲沢社長:「打ち解けてきたと思えば、本題を切りだすだろう」

●竹虎常務:「本題と言いますと」

○鷲沢社長:「上司が言っていることはきちんと聞き、やりたまえ、ということだ。他にない」

●竹虎常務:「社長の前では『わかりました』と言うに決まっています」

○鷲沢社長:「そうなのかな。その気配が感じられたら『口だけだと後でわかったら容赦しない』と付け加えよう」

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