厚生労働省が9月29日に発表した「一般職業紹介状況(平成29年8月分)」によると、8月の有効求人倍率は1.52倍となりました。7月の倍率も1.52倍で1974年2月の1.53倍以来、43年5カ月ぶりの高水準と言われていました。
求職者数に対して企業の求人数が多い、売り手市場が続いているわけです。採用目標をなかなか達成できず、頭を悩ませている経営者が多いことでしょう。
鷲沢社長と小鹿コンサルタントとの会話を読んでください。
○鷲沢社長:「駄目だ、駄目だ、駄目だ!」
●小鹿コンサルタント:「どうされました、社長」
○鷲沢社長:「新卒の採用目標を全然達成できていない」
●小鹿コンサルタント:「そういえば御社の採用目標は聞いたことがありませんでした」
○鷲沢社長:「6人だよ、6人。去年は7人が目標だったが4人しか採用できなかった。そのうち1人が半年で辞めた」
●小鹿コンサルタント:「結局3人ということですね」
○鷲沢社長:「その前は5人の採用目標で5人に内定を出し、入社が1名。しかし入って4カ月で辞めた」
●小鹿コンサルタント:「ゼロじゃないですか」
○鷲沢社長:「さらにその前の年は4人の採用目標で5人に内定を出したが1人だけ入社。その1人は今年になって辞めた。ここ数年、新しい社員が計画通りに増えていない」
●小鹿コンサルタント:「採用コストを結構かけているのでしょうね」
採用活動は営業活動と同じ
○鷲沢社長:「もちろんだ。Webにリクルーティング専用のページを作っているし、合同説明会にも出ている。それだけではなく、大学や専門学校をまわれと人事部に言っているのだが」
●小鹿コンサルタント:「採用活動も営業活動と同じですから、大学や専門学校を足でまわる必要がありますね。お金をかけてイベントをしたり、広告を出したりしても、それだけだったらコンバージョン率は低いままでしょう」
○鷲沢社長:「まさに営業活動だな。金をかけるのではなく、汗をかくものだ」
●小鹿コンサルタント:「社長が仰っている、営業目標の2倍程度の材料を予め仕込んで目標を絶対達成させる『予材管理』を採用活動にも取り入れたらどうですが」
○鷲沢社長:「そうだ、採用活動にも役立つだろう」
●小鹿コンサルタント:「予め接触する人材の数をどうするかですね。目標の2倍ではまったく足りないでしょう」
○鷲沢社長:「数もそうだが、期間も大事だ。大学2年生、3年生のころから接点を持ち、関係を築いておかないと」
●小鹿コンサルタント:「最初は社名を知ってもらうだけでもいいと思います。毎年6~7人の新入社員が欲しいならその10倍くらい、60~70人の学生に知ってもらう努力を毎年続けることです」
○鷲沢社長:「そこまで地道なことをやっている会社は少ないだろうな」
●小鹿コンサルタント:「物事は何でもそうじゃないでしょうか。予材管理だって地道なやり方です」
○鷲沢社長:「地道が一番だ」
●小鹿コンサルタント:「最近の若者は目先のことしか考えてない、と言う大人が多いですが、大人こそ目先の利益に執着してますよね」
○鷲沢社長:「言い返せんことを言うな! 耳が痛い」
●小鹿コンサルタント:「地道なやり方で思い出しましたが、リファラルリクルーティングは試してみる価値があります。予材管理と組み合わせれば、採用目標を確実に達成できるのではないでしょうか」
○鷲沢社長:「リファラルなんとかって何だ」
金で釣る必要はない
●小鹿コンサルタント:「リファラル採用とも言います。社員による推薦や紹介です」
○鷲沢社長:「ああ、社員が母校に戻って会社を紹介するあれか。それならやっている。入社してくれたら、紹介してくれた社員にインセンティブを渡すことになっている」
●小鹿コンサルタント:「新卒採用に限らず、既卒採用にも有効です。が、先ほどの入社人数を聞く限り、機能していませんね」
○鷲沢社長:「誰も紹介したがらない。インセンティブが低いのだろうか」
●小鹿コンサルタント:「そういう発想だから機能しないのです。金で釣ることでリファラル採用を可能にしている企業なんてありません」
○鷲沢社長:「じゃあ、何で釣るんだ」
●小鹿コンサルタント:「釣る必要がそもそもありません。リファラルリクルーティングができているところの社員は会社が大好きなのです。社員が会社に強い愛着を持っているので、『誰かいい人はいないか』と社長が言うだけで自主的に動き始めます」
○鷲沢社長:「そんな会社が本当にあるのか」
●小鹿コンサルタント:「ありますよ。ところで以前、ご自宅にある『薪ストーブ』の話をされていましたよね」
○鷲沢社長:「なんだ急に。確かに話はした。ノルウェーのメーカー品だよ。50万円ぐらい出して買った。自慢の一品だ」
●小鹿コンサルタント:「自慢の一品となると誰かに見てもらいたいですよね」
○鷲沢社長:「見せたいね。小鹿さんも冬になったらわが家に来ればいい。薪ストーブの炎を見つめながらバーボンなんかを飲んでいると時間が経つのを忘れるよ」
●小鹿コンサルタント:「リファラルリクルーティングも同じですよ」
○鷲沢社長:「どういうことだ」
自分の会社は『自慢の一品』か
●小鹿コンサルタント:「リファラルリクルーティングができているところの社員は自分の会社を『自慢の一品』ととらえているのです」
○鷲沢社長:「何!」
●小鹿コンサルタント:「好きな物は誰かに見てもらいたいし、味わってもらいたいし、経験して欲しい。だから後輩や友人に紹介する。インセンティブなんて要りません」
○鷲沢社長:「うーむ。となると、友だちが沢山いる社員がどれぐらいいるかだな」
●小鹿コンサルタント:「友だちを誘っても簡単には入社してくれないでしょう。狙い目は『友だちの友だち』と言われています」
○鷲沢社長:「友だちに『誰かうちに入ってくれそうな友だちはいないか』と聞くところから始めるわけだ。自分の会社を誰かに自慢したくなる。誰かに味わってもらいたいと思っている。そんな社員がうちにどれだけいるかな」
●小鹿コンサルタント:「そこです。リファラルリクルーティングができている会社は社風がそもそもいい。だから社員は自慢したくなる。縁があって入社した新卒者も転職者も定着する。みんなで成果を出すわけです」
○鷲沢社長:「良循環だな。社風か。高いハードルだ。まさに地道な努力が必要になる」
●小鹿コンサルタント:「地道な努力なしで社風はよくなりませんからね」
○鷲沢社長:「手順としては、社員にうちの会社を好きになってもらうことだな」
●小鹿コンサルタント:「いえ。そうではないです」
○鷲沢社長:「なんだ」
●小鹿コンサルタント:「まず、みんなに好かれる会社を目指すことです」
いい会社がいい人材を採用できる時代
リファラルリクルーティング(リファラル採用)を取り入れている企業が増えているそうです。
それほどコストがかかりませんし、入ってきた社員の定着率も高い。リファラルリクルーティングを通じて入社した社員ほどいい仕事をするとさえ言われています。
ただし、この手法を取り入れても、もともと社風のいい会社でないと成果を上げることができません。
いい会社がいい人材を採用でき、さらにいい会社になっていく時代になっています。いい人材を採用するためにも、営業目標を絶対達成し、業績を安定させ、社風をよくしていきましょう。
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