○鷲沢社長:「『儲かっているか』と聞いても『ボチボチです』という受け答えばかりだな。『うちは駄目だ』とか『当社は好調だ』とはっきり口にする経営者は少ない。業績の話になると腹の探り合いだよ。独特の間合いをとって牽制しあっている感じだ」

●小鹿コンサルタント:「広告業界は動画広告などリッチメディアの進化によって変わりつつあり、その中で成長している企業と衰退している企業とに分かれ始めたと聞いています」

○鷲沢社長:「そこまではっきりしていないな、新聞・雑誌・テレビ・ラジオの4マス媒体の需要はまだまだある。とはいえ、小鹿さんの見解は的外れじゃない。新しいメディアの在り方が問われているから、それに乗り遅れた広告企業は先がないだろう」

●小鹿コンサルタント:「そういった最新動向の情報交換はあるのですか」

○鷲沢社長:「もちろん。そっちの話ばかりだ。広告業界の経営者が集まったら。あの会社がアドテクに熱心だとか、あの会社はスマホを使ったオンラインツーオフラインの広告に力を入れているとか、そんなネタばかりになる」

●小鹿コンサルタント:「楽しそうじゃないですか」

モットーは「ゆっくりと焦る」

○鷲沢社長:「上っ面のキーワードばかり並べたって駄目だ。私が見るところ、業績が悪そうな会社ほど目新しいものを追いかけたがる。地に足がついていない。一部のイノベーター企業は別にして、お客様のニーズはまだそこまで来ていない」

●小鹿コンサルタント:「とはいえ、変化はしているわけで舵取りが難しいですね」

○鷲沢社長:「私のモットーは『ゆっくりと焦る』だ。焦ってドタバタしたくはない。新しい時流のことばかり気にして焦ると、かえって物事を考えなくなる。風にうまく乗ることは重要だが、風に流されてはいかん」

●小鹿コンサルタント:「昔ながらのメディア広告で収益の土台を維持しながら、新しい広告技術も研究し、お客様に提案していく。こういう姿勢が大事ということですね。ただ、肝心の土台が外部環境に左右されやすい業界です」

○鷲沢社長:「その通りだ。業績を安定させるのは簡単ではない。だから私は予材管理が重要だと言い続けている」

●小鹿コンサルタント:「事業目標の2倍の営業の材料を予め仕込んでおいて管理する手法ですね」

○鷲沢社長:「目標の2倍の予材を仕込もうとすると皆で頭を使わなければならない。マーケットを分析し、お客様に向き合うことで予材が生まれてくる。そうすれば目標を絶対達成でき、業績は安定するはずだ」

●小鹿コンサルタント:「皆が考える癖をつけて、常に勝たないといけない、ということですか」

○鷲沢社長:「そうだ。月ごとに見たら上がったり下がったりしてもいいが、一期の終わりには目標を達成する。目標ぐらい毎年、絶対達成しなければならん」

●小鹿コンサルタント:「外部環境にかかわらず、必ず目標を達成することを目指すと」

○鷲沢社長:「景気がどうとか、国の政策がどうとか、そういうことに気を取られてはいかん。地道にしっかりと事業目標を達成させる、そんな経営が私の理想だ」

●小鹿コンサルタント:「帝国データバンクの調べによると、日本で黒字経営をしている企業の割合は31%だそうです」

○鷲沢社長:「約7割が赤字ということだな。調査対象の企業数は何社だ」

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