「課長が全員そうすべきだなんて誰が決めたのか」

○鷲沢社長:「私は調べた。白金さんは3年も前から課長職の基準を満たしているのに、昇進できていない。一方、白金さんよりキャリアが浅い男性課長がこの3年間で4人も誕生している」

●猫山課長:「口を挟ませてください、社長。広告代理店の課長職は激務なのです。夜も遅いです。メディア関係者と夜の付き合いもあります」

○鷲沢社長:「この妄想課長、いい加減に現状維持バイアスを外せ!」

●猫山課長:「も、妄想課長って……」

○鷲沢社長:「夜の付き合いはあるだろう。だが課長は全員そうすべきだなんて誰が決めた。君か」

●猫山課長:「決めたというわけでは……」

○鷲沢社長:「いいか。知っていると思うが当社の20代の従業員のうち、54%は女性だ。今後は女性がもっと活躍できる会社を目指す。先代社長の遺言の一部だ。まったくその通りだ」

●猫山課長:「はい」

○鷲沢社長:「白金さんは女性社員からとても支持されている。憧れの存在だな。ところがいつまで経っても課長になれない。そんな馬鹿なことがあるか。理不尽な慣習があるなら私が終止符を打つ」

●猫山課長:「……しかし、あの、末っ子の件は……」

○鷲沢社長:「白金さんと話をした。ヘルパーを付けるから大丈夫だと言っている」

●猫山課長:「そうですか」

○鷲沢社長:「白金さんには時短勤務をしてもらう。夕方4時までだ。お子さんの面倒がもっと見られるだろう」

●猫山課長:「えっ、4時までですか」

○鷲沢社長:「夜の付き合いが、とか言ったら本当に怒るぞ。働き方改革だ。モバイル端末を渡して、いつでも連絡をとれるようにしてもらう。何か問題があるか」

●猫山課長:「やはり課長なのですから……」

○鷲沢社長:「その通り、課長だ。当然、課長としての結果は求める。勤務時間を短くするとともに、しっかり成果は出してもらう。彼女も同意している」

●猫山課長:「……」

○鷲沢社長:「それにしても君の早とちりは酷いな。先日のY社の案件はどうなった」

●猫山課長:「あ、あの会社は社長が当社を嫌っているのです。どんな提案をしても駄目です」

○鷲沢社長:「やれやれ。それが妄想だと言うんだ。私と竹虎常務とで明日、提案に行く。君もついてきたまえ。先日ご挨拶に伺ったが、Y社の社長は乗り気だったぞ。白金さんのことをどうこう言う前に、君の営業成績を何とかしたまえ」

部分を全体だと評価していないか

 ある一部分だけを見て、その部分を全体だと思い込んで評価を下す人がいます。決めつけ、早とちりの類です。早とちりを無くすためには、客観的に物事を見つめる視点や、データで表現された事実を確認する姿勢が不可欠です。

 コンサルタントとしての私の経験から言うと、内部事情になまじ詳しい人ほど客観的な視点が欠け、強い先入観を持つ傾向があるように思います。そういう人は疑問を持ったとしても、そのまま発言や行動につなげず、外部の人にいったん確認してもらいましょう。