○鷲沢社長:「最初は私と専務と常務と担当者たち、総勢5人で、先方の課長に会い、平謝りした」

●竹虎常務:「はい」

○鷲沢社長:「そうしたら『部長にも謝れ』と言ってきた。5人ともほかの予定をキャンセルして指定された日に謝りに行った」

●竹虎常務:「問答無用で日を指定されましたからね」

○鷲沢社長:「今度は『本部長にも謝れ』と言いやがった。『いい加減にしてくれ』と言い返そうとしたら、専務と君にさえぎられた」

「要するにあの課長はクレーマーなんだ」

●竹虎常務:「思いとどまっていただきました」

○鷲沢社長:「行ってみたらどうだ。出てきた本部長は『私にまで頭を下げなくてもいいですよ』と言っていたじゃないか。要するにあの課長はクレーマーなんだ」

●竹虎常務:「そう、そうですが」

○鷲沢社長:「本部長がああ言ってくれたにもかかわらず、クレーマー課長が『次は社長に謝れ』と連絡してきたから、怒鳴り込んだまでだ」

●竹虎常務:「『怒鳴り込んでやる』と社長はおっしゃっていましたが、大げさに言っているだけだと思っていました。まさか本当に相手の社長の前でたんかを切るとは……」

○鷲沢社長:「相手の社長を見たか」

●竹虎常務:「びっくりしました。『こちらの対応に問題がありました。申し訳ございません』と頭を下げられました」

○鷲沢社長:「クレーマー課長の前で私に頭を下げてくれた。節度を知らない奴には痛い目にあってもらわないと」

●竹虎常務:「痛い目って、あの課長がですか」

○鷲沢社長:「当然、それなりの罰を受けるだろう。絡んだ相手が悪かったな」

●竹虎常務:「絡んだ相手がって、当社のことですよね……でも絡むきっかけは我々で……とにかく、よくビビりませんでしたね。大口の取引先の社長にあんな言い方をするなんて。私では到底できません」

○鷲沢社長:「私だって、君だったらできないよ」

●竹虎常務:「社長というポジションだからできたということですか」

○鷲沢社長:「違う」

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