「ひどいじゃないですか」「そのほうがクリエイティブでしょう?」

○鷲沢社長:「なんだかだらだら走っているそうです。一事が万事で、練習も選手任せのようですね。監督は自分で考えろと言っているそうですが、息子は何をどう努力したらいいのか、よくわからない、とぼやいています」

●犬神専務:「その監督、指導者としてちょっとよくないですね。選手が伸びないですよ……ちょっと待ってください、それって、ホームページの話と同じじゃないですか」

○鷲沢社長:「そうです」

●犬神専務:「野球部の監督と同じことを私やデザイナーにしているわけですか。ひどいじゃないですか」

○鷲沢社長:「でもそのほうがクリエイティブなのでしょう。自主性を尊重すれば創造性豊かな結果が出ると専務は仰いました」

●犬神専務:「……え」

○鷲沢社長:「私の考えは異なります。明確な期限とノルマがあったほうが人は考える。創意工夫をして、やり切ろうとする。そうすることで創造力が鍛えられていく。そう信じています」

●犬神専務:「……」

○鷲沢社長:「あるべき姿を示してほしいと専務は言いましたが、あるべき姿とノルマは同じだと私は思います。表現が違うだけです」

●犬神専務:「……そ、そうでしょうか」

○鷲沢社長:「息子に『キロ5分ペースで400メートルトラックを30分走れ』と言えば、どうすればそのスピードでその距離を走ることができるか考えるようになるでしょう。やる気だって出るはずです」

●犬神専務:「何を仰りたいのかわかってきました」

○鷲沢社長:「それはよかった。では専務、いつまでに、何の目的で、どのようなホームページを作るのか、目標を定めてください。可能な限り、目標に数字を入れる。そのやり方でデザイナーがどう仕事をするか、しっかり見てください。モチベーションが上がるか下がるか。以前に増してクリエイティブな仕事をするかどうか」

●犬神専務:「やってみます」

○鷲沢社長:「できれば期限内に『絶対達成』と伝えてほしいですが」

期限とノルマがあるからこそ、人は考える

 家族旅行のために荷物をスーツケースに入れていたら多くて入りきらなかった。そのようなとき選択肢は二つしかありません。荷物を減らすか、スーツケースを換えるか。

 普通の人は荷物を減らすでしょう。どの荷物を残して、どの荷物を諦めるのか、考えるわけです。荷物が多いからといって、大きいスーツケースを買ったり、別のカバンも使ったりしていてはキリがありません。

 期限とノルマという制約があるからこそ、人は考えようとするのです。考える社員をひとりでも増やすために、明確かつ適切なノルマを設定していきましょう。