「せめて期限だけでも」

●犬神専務:「しかし、仰る通り、我々の看板ですから、あまり悠長なことを言っているわけには。せめて期限だけでも。いや、それからやっぱり、どういうホームページを作ったらいいのでしょうか。それを教えてくださいとデザイナーが言っています」

○鷲沢社長:「うーん……」

●犬神専務:「実はデザイナーがぼやいています。どうもモチベーションが上がらない、と。どんなに頑張っても駄目出しばかりですから」

○鷲沢社長:「ちょっと待ってください。専務のやりたいようにやってくれればいいのですよ。デザイナーも作りたいものを作ってくれれば」

●犬神専務:「そうは言われましても……。適当なものを作るわけにはいきません」

○鷲沢社長:「それはそうです」

●犬神専務:「ですから、どんなホームページを作ったらいいのか、何というか、基準みたいなものを教えてください。どのようなお客様に、どれぐらいの頻度で訪問してもらいたいのか。学生もホームページをよく見ますから、どんな人材を採用したいのか、当社をどのように見せたいのか。あるべき姿を示していただかないと」

○鷲沢社長:「そうですか」

●犬神専務:「……社長は前の会社で辣腕を振るっておられたと聞きましたが」

○鷲沢社長:「あるべき姿を明確に決めたうえで戦略や行動計画を立て、計画は絶対達成するように伝え、がんがんやっていました」

●犬神専務:「そうですよね。だったら」

○鷲沢社長:「専務。あなたのお父様が亡くなられる直前、私を指名されました。それで社長に就任しましたが、あくまでも暫定です。いずれはあなたが会社を継がなくてはいけません」

●犬神専務:「も、もちろん、わかっています。ただ、まだ私は27歳で……。今年の4月に、留学先のサンフランシスコから戻ってきたばかりです。父から専務をやれと言われましたが、組織の一員として本格的に働くのは当社が初めてですし」

○鷲沢社長:「でも、先代の社長が亡くなられて、あなたはすぐに方針を打ち出した」

●犬神専務:「ああ、ノルマ撤廃の件ですね」

○鷲沢社長:「シリコンバレーの企業から学んだやり方だとか」

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