「その顔を止めろ、ドヤ部下!」
●獅子山課長:「それはひどい言い方ですよ」
○鷲沢社長:「そう言われたくなかったら、もっと謙虚に働きたまえ」
●獅子山課長:「私が謙虚じゃない、と言いたいのですか」
○鷲沢社長:「謙虚でないからドヤ顔になる」
●獅子山課長:「お話ししますと、社長が赴任した当日の歓迎会の手配、司会者の指名、プレゼントの花束の用意、すべて私がやりました」
○鷲沢社長:「それはそれは、ありがとう」
●獅子山課長:「庶務の人はみんな私を頼ってきます。どうしてそうなる分かりますか。私が気配りできる人だとみんな知っているからです」
○鷲沢社長:「庶務のみんなが君を慕っているのは君が気配りの達人だからか」
●獅子山課長:「その通りです」
○鷲沢社長:「その顔を止めろ、ドヤ部下! 君は営業課長だろう。気配り達人でございます、とドヤ顔をされてたまるか」
●獅子山課長:「ド、ドヤ部下って。気配りがなぜいけないのですか」
○鷲沢社長:「今朝、営業部長と一緒にB社へ行ってきた。君の担当客だ」
●獅子山課長:「B社へ、今朝……。何の用事で行かれたのですか」
○鷲沢社長:「わが社は広告代理店だ。広告を売りに行ったに決まっている。野菜や果物を売りに行ったとでも思ったか」
●獅子山課長:「いえ、それはそうですが」
○鷲沢社長:「B社の専務にお会いし、来春のフォーラムに関する提案をした。45分プレゼンし、社長にも出てきてもらった。3000万円ほど発注をしていただいた」
●獅子山課長:「え! 45分のプレゼンって……。いつの間に」
○鷲沢社長:「部長は担当営業の君を指名したそうだが、君は『忙しい』と言って断ったそうじゃないか。昨夜相談を受けたから、部長と一緒にプレゼン資料を作った」
●獅子山課長:「そ、それで3000万円の案件を受注……」
○鷲沢社長:「君はB社へ何年かよっている」
●獅子山課長:「2年ほどでしょうか」
○鷲沢社長:「どのくらい仕事をいただいたのか」
●獅子山課長:「ええと」
○鷲沢社長:「営業だろう、君は。そういう数字は即答しろ。過去2年で3件、合計で245万円だ。営業支援システムの履歴によればそうなっている」
●獅子山課長:「……」
○鷲沢社長:「君なりに頑張ったのだろうが2年で245万円だ。今日、初めてB社へ行った私は3000万円。どうだっ!」
●獅子山課長:「う……」
○鷲沢社長:「ドヤ顔とは、こういうときにするものだ」
●獅子山課長:「わ、わかりました」
○鷲沢社長:「気配りも結構だが、君は営業課長だ。まず、目標予算の絶対達成に集中しろ。今期このままいくと君のところは89%の達成率で終わるぞ」
●獅子山課長:「申し訳ありません」
○鷲沢社長:「ドヤ顔をしたいなら、年間目標を上回るくらいの結果を出してからにしろ。そういうときのドヤ顔なら、いくらでも見てやる」
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