「顎を引き、眉間に皺を寄せて、口元を引き締めろ」

●獅子山課長:「わっ。びっくりしました」

○鷲沢社長:「さっきから私の顔をじろじろ見て、何か言いたいのか」

●獅子山課長:「いえ、そういうわけでは」

○鷲沢社長:「だったら仕事に戻りたまえ」

●獅子山課長:「あのう、その経営会議資料、本来なら営業部長が用意するものです」

○鷲沢社長:「何?」

●獅子山課長:「それを私がやりました」

○鷲沢社長:「……だから何だ」

●獅子山課長:「まだ赴任したばかりで社長はご存知ないかもしれませんが、営業部長は外回りばかりして、こういった件は私に任せているのです」

○鷲沢社長:「……」

●獅子山課長:「ですので何かございましたら部長ではなく私にお申し付けください」

○鷲沢社長:「……あのさ」

●獅子山課長:「はい、なんでしょう」

○鷲沢社長:「その顔を止めろ」

●獅子山課長:「えっ」

○鷲沢社長:「もっと顎を引き、眉間に皺を寄せて、口元を引き締めろ」

●獅子山課長:「どういうことですか」

○鷲沢社長:「本社ビルの向かいにある喫茶店のコーヒーを飲んだことがあるか」

●獅子山課長:「はあ、ありますが。すごく濃いです」

○鷲沢社長:「そう、その顔だ。私の前ではそういう顔をしてほしい」

●獅子山課長:「え」

○鷲沢社長:「さっきから君は顎を上げ、目を細め、ニヤニヤしている。『ドヤ顔』というやつだな。そんな顔で私を見るな」

●獅子山課長:「ドヤ顔をしていたつもりはないのですが」

○鷲沢社長:「人間、気持ちが顔に出るものだ。資料を作ってくれたのは御苦労だったが、それぐらいでドヤ顔をしてもらっては困る」

●獅子山課長:「あの、社長はまだ知らないのでしょうが、6人いる課長たちも細々としたことが苦手で、私が代わりにやることが多いのです」

○鷲沢社長:「それがどうした」

●獅子山課長:「それがどうした、って……」

○鷲沢社長:「さっきから何度も言っている通り、早く仕事に戻りたまえ。ドヤ顔をする部下を私は『ドヤ部下』と呼ぶ」

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