「仕事を放っておいて瞑想なんかやれるか」
●鳥山人事課長:「ちょ、ちょっと待ってください。マインドフルネス状態とリラックス状態とは違います。マインドフルネスというのは、いま現在起こっている内面の事象に心を集中させることです。それができるには正しい知識と訓練が必要です。ぼけーっとリラックスするわけではありません」
○鷲沢社長:「何が違うかよくわからん」
●鳥山人事課長:「脳のエネルギー消費を抑え、ストレスを低減させることが目的です。そういうテクニックを学べますから、社長には特に受講してもらいたいです」
○鷲沢社長:「なんだって! 私が瞑想の研修に出る? 冗談じゃない。そういうのは苦手だ」
●鳥山人事課長:「苦手なことをあえてやることが研修の目的です。研修でなければ、こういうことをやらないでしょう」
○鷲沢社長:「大きなお世話だ。私の場合、脳を働かせておいたほうがストレスが減っていく。いいか、目の前に処理しなければならないタスクが5つある。放っておいたまま、瞑想なんかやれるか。瞑想すればするほどストレスがたまる」
●鳥山人事課長:「じゃあ、どうすればいいんですか」
○鷲沢社長:「タスクを片付けるんだよ! マインドフルネスだか瞑想だか知らないが、やることもやらずに目を閉じて深呼吸なんか繰り返していたら、仕事が迷走するわ!」
●鳥山人事課長:「駄洒落なんか言わないでください。とにかくひたすら仕事をしろ、っていつの時代の話ですか。社長がそんな態度だから、みんなストレスまみれなんです」
○鷲沢社長:「話をすり替えていないか。では聞くが、タスクを先送りしてかまわない、定刻になったら何があろうとも仕事を止めて帰ってよいというのか」
●鳥山人事課長:「ですから、そういう話ではないのです。先ほどもお伝えしたとおり、マインドフルネス瞑想を繰り返すことで仕事をこなす力がついてくるのです。すぐ効果が出るとまでは申し上げませんが、結果として仕事をうまくこなせるようになるでしょう。走ってばかりいれば、走るスピードは上がりますか。今の選手は違うトレーニングをするでしょう」
○鷲沢社長:「わが社の社員が陸上選手のように走っているのか? さっき言っていたグーグルやフェイスブックで働く社員のように頭を使っているのか? 私には信じられん」
●鳥山人事課長:「そんな」
○鷲沢社長:「たいした量の仕事もしてないのに、脳のエネルギー消費を抑え、心が満たされた状態にしたいってか! もっと働いてから言えよ」
●鳥山人事課長:「しゃ、社長……」
○鷲沢社長:「決めたぞ。さっき言った通り、君がやりたければマインドフルネスの研修を採用してかまわん。ただし休日にだ。そして日ごろの仕事の中でアクションフルネス瞑想をやってもらう」
●鳥山人事課長:「え? アクションフルネス……瞑想?」
○鷲沢社長:「大量行動によって雑念を振り払っている状態にもっていく。短時間で爆発的に行動量を増やせば超集中状態に入ることができる」
●鳥山人事課長:「時折仰っている1日の訪問件数を増やせ、というあれですか」
○鷲沢社長:「そうだ。外回りとは限らない。普通なら1時間かかるタスクを半分の30分でやろうとすれば超集中状態に入れる。これもアクションフルネス瞑想の一種だ」
●鳥山人事課長:「あのう、意図は分からないでもないですが、瞑想とは違うような……」
○鷲沢社長:「大量行動をやり切り、満たされている状態になれば、頭の中の思考ノイズや疲れた気分など吹っ飛んでしまうわ!君が瞑想に期待していることと同じだよ」
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