「アイデアを出せ」と言われ、数人が集まってブレーンストーミングをした経験をお持ちの方は多いでしょう。
実施することは簡単ですが、結果を出すのはなかなか難しいものです。複数人を集めてアイデアを出そうとしても、レベルの高いファシリテーターがいないと、月並みなアイデアしか出せなかったり、すぐにアイデアが煮詰まったりします。
では、ひとりでブレーンストーミングをやってみてはいかがでしょう。今回は「ひとりブレスト」について紹介します。小鹿コンサルタントと獅子山課長との会話を読んでください。
○獅子山課長:「小鹿さん、本当に頭にきます!」
●小鹿コンサルタント:「どうされたのですか」
○獅子山課長:「あなたもコンサルタントでしょう、社長の暴走を止めてくださいよ」
●小鹿コンサルタント:「社長が暴走しているのですか」
○獅子山課長:「この前の営業会議です。あなたは出ていなかったけれど」
●小鹿コンサルタント:「持田主任の営業同行をしていました。社長から、急に開くことになった会議だから無理に来なくていいと言われていたので」
○獅子山課長:「そうでしたか……。ひどいもんです。相変わらず一方的で」
●小鹿コンサルタント:「10月のイベントが議題でしたよね」
○獅子山課長:「そうです。会議中に社長が突然怒り始めたのです」
●小鹿コンサルタント:「どうしてでしょう」
○獅子山課長:「イベントの集客状況が悪いからです」
「誰か、不用意な発言をしませんでしたか」
●小鹿コンサルタント:「集客目標の300人に対し、申し込みは現在43人と聞いています。確かによくありませんが、そのことを社長は会議前に知っていましたよ」
○獅子山課長:「そうかもしれませんが、集客をどうしたものかと話している途中で社長は怒ったのです」
●小鹿コンサルタント:「誰か、不用意な発言をしませんでしたか」
○獅子山課長:「不用意な発言?」
●小鹿コンサルタント:「そうです」
○獅子山課長:「あ……!」
●小鹿コンサルタント:「何か思い出しましたか」
○獅子山課長:「あれだ」
●小鹿コンサルタント:「心当たりがあるのですね」
○獅子山課長:「ええ。部長がつぶやいたのです。『そもそも、このイベントって何のためにやるんでしたっけ』と」
●小鹿コンサルタント:「確かにそれはまずい」
○獅子山課長:「独り言に近かったのですが、社長に聞こえたのでしょう。それで怒りが爆発したのだと思います」
●小鹿コンサルタント:「社長は予材管理の定着をはかろうと必死です。目標の2倍の営業の材料を予め仕込んでおき、目標を絶対達成させるやり方です。そのためにイベントをやって予材を増やそうとしているのに、営業部長が理解していなかったというのは致命的です」
○獅子山課長:「大声で言っていました。『予材だ!』って。『お前らが予材を増やそうとしないから、イベントをやって予材を蓄積しようとしとるんだろうが!』と」
●小鹿コンサルタント:「怒られて当然だと思います」
○獅子山課長:「部長のおかげで厄介なことになりました。今度のイベントで300名を絶対呼ばなければなりません」
●小鹿コンサルタント:「300名は努力目標で必達目標ではなかったはずですが」
○獅子山課長:「仕方がありません。社長を怒らせたせいです」
「意見は合計いくつありましたか」
●小鹿コンサルタント:「現在43名です。どうするつもりですか」
○獅子山課長:「『絶対に300名集めろ』と怒鳴って、社長は会議室を飛び出していきましたから、残った部課長で意見を出し合いました」
●小鹿コンサルタント:「それで?」
○獅子山課長:「いろいろな意見が出ましたが、どれも決め手に欠けるものばかりで……。そこでコンサルタントの小鹿さんに聞いてみようと思いまして」
●小鹿コンサルタント:「部課長が集まって出した『いろいろな意見』は合計いくつありましたか」
○獅子山課長:「は?」
●小鹿コンサルタント:「みんなでいろいろな意見を出したと言いましたよね」
○獅子山課長:「そうは言いましたが……。実はそんなにはなかったと思います」
●小鹿コンサルタント:「いろいろな意見が出たと思っていたが、振り返ると大したものはなかったということですね」
○獅子山課長:「まぁ、そういうことになりますね」
●小鹿コンサルタント:「アイデアを出すためには『発散』と『収束』が必要です。発散とは質より量を優先することです。思いつくままでかまいません。とにかく沢山出さないと、いいアイデアにたどりつけないでしょう」
○獅子山課長:「思いつくままと言われましても」
●小鹿コンサルタント:「手段を列挙してみましょう。ネット広告、WEB対策、電話フォロー、飛び込み、チラシ、ファックスDM……。このそれぞれについて今回何をしたらよいか考える。ひとりで20個とか30個、アイデアを出していきます」
○獅子山課長:「え! ひとりで20とか30ですか」
●小鹿コンサルタント:「はい、質より量ですからね。繰り返しますが、思いつくままに書き出していきます」
○獅子山課長:「しかし、飛び込み営業を当社はやらないのですが」
●小鹿コンサルタント:「そうであったとしても思いついたことがあれば書き出しましょう。書き出したアイデアから連想して広げたり、別のアイデアと結合させたりするためです」
○獅子山課長:「連想に、結合……ですか」
●小鹿コンサルタント:「皆さんはまず、『ひとりブレスト』をやったほうがよさそうですね」
○獅子山課長:「ブレーンストーミングをひとりでやるのですか」
●小鹿コンサルタント:「私はこのスマホサイズのメモ帳をいつも持っています。これで『ひとりブレスト』をよくやりますよ。コツとしては、まずメモ手帳を30枚、切り離します。1枚のメモに一つのアイデアを書いていきます」
○獅子山課長:「ははあ、アイデアが出たらメモに書くのではなく、最初からメモを切り離しておいて、そこに書いていくわけですね」
●小鹿コンサルタント:「そうです」
○獅子山課長:「30枚切り離すと、30個のアイデアを出さなければならない、というプレッシャーを覚えますね」
●小鹿コンサルタント:「似たアイデアでもかまいません。脳の長期記憶にアクセスして必ず30個以上、出しましょう」
○獅子山課長:「頭から煙が出そうです」
●小鹿コンサルタント:「それぐらい考えたらいいと思います。大事なのは考える習慣を身に付けることですから」
○獅子山課長:「うっ!」
●小鹿コンサルタント:「このイベントって何のためにやるんでしたっけ』と営業部のトップが言うようでは考える組織になっていない。社長はそう受け止めてお怒りになったのでしょう」
○獅子山課長:「考える習慣がなければ予材は増えないですよね」
●小鹿コンサルタント:「ええ。予材は商談ではありません。仮説です。考える習慣がない人、考える習慣のない組織に予材がたまっていかないのは当然です」
○獅子山課長:「耳が痛いです」
ひとりブレストの習慣を身に付けよう
ブレーンストーミングは新しいアイデアを出すのに効果的な手法です。複数の人が集まり、アイデアや意見を出し合って発散させていくのですが、たったひとりで実施することもできます。
メモ帳から用紙を20枚か30枚切り、机の上などに並べ、思いつくままにアイデアを書き出していきましょう。
書き出したアイデアを俯瞰して眺めていると、一定の法則が見つかったりします。ひとつのアイデアから連想したり、別のアイデアと結合して新たなアイデアを発見することもできます。
ひとりなら自分のペースでブレーンストーミングができます。「ひとりブレスト」の習慣を身に付けると、頭が鍛えられます。
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