「どうして不便なホテルにわざわざ泊まったのか」
○鷲沢社長:「この際だから言うが、そのボールペン、何とかならんのか」
●熊岡課長:「え?」
○鷲沢社長:「どこかの展示会でもらったボールペンだろう。君はいつもそれだ。もう少し高級なものを使ったらどうだ」
●熊岡課長:「高級というとモンブランとかパーカーのボールペンですか」
○鷲沢社長:「貰い物よりもう少し高級、と言っただろう。数千円も出せば気の利いたボールペンが買える」
●熊岡課長:「まあ、そうかもしれませんが。何分、お金がそんなにないので……」
○鷲沢社長:「おいおい。君の給料はわかっている。何年も使うボールペンに数千円出せないほど薄給ではないぞ」
●熊岡課長:「そ、そりゃあ、そうですが……」
○鷲沢社長:「それからホテルだ」
●熊岡課長:「ホテル? あの、さっきから社長は何を……」
○鷲沢社長:「この間、一緒に出張へ行ったとき、駅から遠い、安いホテルにわざわざ泊まっただろう。どうして私と同じ、駅に近いホテルにしなかったんだ」
●熊岡課長:「どうしてと言われましても……」
○鷲沢社長:「いくらだった」
●熊岡課長:「社長、そんなことどうでもいいじゃないですか」
○鷲沢社長:「教えてくれ。宿泊料はいくらだった」
●熊岡課長:「4000円だったでしょうか」
○鷲沢社長:「安い!」
●熊岡課長:「現地で一番安いホテルを探すようにしています。社長が泊まるような高級ホテルに泊まれませんから」
○鷲沢社長:「それは違うな。私が泊まったホテルは8000円だった。高級でもなんでもない」
●熊岡課長:「……」
○鷲沢社長:「出張旅費規程によれば手当が8000円出る。4000円を小遣いにしたくて遠くに泊まったのか」
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