「自分は自分、他人は他人」と言う人がいます。これは他人と比較する必要がないときに使う表現です。

 しかし、比較して参考になるような人、会社、事例のことまで、他人は他人、他社は他社、その事例はその事例、などと言うのは単なる逃げです。自分にとって都合が悪いから、ついついそのような表現になってしまうのでしょう。

 「それはそれ、これはこれ」が口癖の多摩部長と鷲沢社長のバトルを読んでください。

○鷲沢社長:「やっぱりオリンピックは素晴らしいな。実に色々なドラマがある。4年に1回しかないから余計に感動する」

●多摩部長:「社長、おっしゃる通りです」

○鷲沢社長:「どの選手が素晴らしいとか、どの選手が一番だ、という話じゃない。みんな本当に凄い。メダルを取った人も惜しくも取れなかった人も輝いて見える」

●多摩部長:「同感です。日本の選手も、他国の選手も、凄い人たちばかりです」

○鷲沢社長:「選手にスポットライトが当たるが、裏で支えている監督やコーチ、スタッフも超一流の人たちばかりだろう。我が社もそうでなければならん。現場の従業員たちが主役。我々マネジャーは裏方。主役が皆、活躍できるように我々が全力で支援しなければならない」

●多摩部長:「まったくです。オリンピックを観戦して、気持ちを新たに頑張らなければと思っていたところです」

○鷲沢社長:「頼むぞ。来てもらったのは熊岡課長のグループの件だ。営業成績が悪い」

●多摩部長:「熊岡課長のグループ……ですか。そんなに調子が悪いですか」

○鷲沢社長:「営業部長なのに数字を確認していないのか。5月から3カ月連続で目標を下回っている。このままだと今期の目標達成は厳しいぞ」

●多摩部長:「直ちに確認します」

○鷲沢社長:「確認しますって……。オリンピックを観て気持ちを新たにしたわりには迫力がないぞ」

●多摩部長:「そう言われましても」

○鷲沢社長:「営業全員に金メダルを取れとは言わないが、もっと活躍してほしいと思うだろう」

●多摩部長:「社長、お言葉ですが、それはそれ、これはこれ、です。気持ちは新たにしますが、仕事は仕事、オリンピックはオリンピックです。当社の仕事はオリンピックの競技とは違いますよ」

○鷲沢社長:「そんなことはわかっとる! 気持ちを新たにしたなら、どうしてそういう冷めた口のきき方をするのかね」

●多摩部長:「事実を申し上げているのです。オリンピックは4年に1回だから盛り上がります。当社の仕事は毎日あります。毎日全力というわけにはいきません」

○鷲沢社長:「話がかみ合わないな。競合他社は売り上げを伸ばしているというのに」

●多摩部長:「競合は競合です。うちはうちですから」