「常識だから、と開き直るのは止めろ」
●亀戸課長:「前の会社で営業日報を書かせていたから我が社でも、という発言は撤回します。ですが、営業に日報を書かせない会社なんて、どれぐらいあるんですか。日報は常識です。理由なんていらないですよ」
○鷲沢社長:「開き直るのは止めろ。日報が常識というが、それを示す調査データはあるのか」
●亀戸課長:「……」
○鷲沢社長:「もっとも私だって、日報が常識ではない、という調査データを持っているわけではない。ただ、私が銀行の支社長だった頃、営業の見直しをする取引先が結構あった。ざっと200社ほど、営業改革の実態を見せてもらった。その上で私なりに日報はいらないと判断した。君もそれほど多くの企業の営業組織を見てまわったのか」
●亀戸課長:「私は銀行員ではありませんから。とにかく常識は常識です。妙な理屈で絡んでくるから、私を含めた課長たちと口論になるのですよ」
○鷲沢社長:「私の質問に答えず、逆ギレするのは止めろ」
●亀戸課長:「逆ギレしてるのは社長のほうですよ!」
○鷲沢社長:「いい加減、現状維持バイアスを外したまえ!」
●亀戸課長:「げ、現状維持バイアス……」
○鷲沢社長:「なぜもっとロジカルに考えられない。君の言う通り、多くの会社が営業日報を書かせていたとして、だから当社もやらなくてはならないという理屈になるのか」
●亀戸課長:「そ、そりゃあ」
○鷲沢社長:「そこがもうバイアスなんだよ。なんでもかんでも多くの企業が採用しているやり方なら君は取り入れるのか。物事を多数決で決めるのか」
●亀戸課長:「え、多数決は大切かと……」
○鷲沢社長:「そうか。なら話がはやい。営業日報の廃止は経営会議と営業会議に諮った。当時の出席者全員から了承を得た。以上だ」
●亀戸課長:「そ、そうなんですか……」
○鷲沢社長:「この決定はすでに説明済みだ。もう3年前の話だ」
●亀戸課長:「……」
○鷲沢社長:「だからといって君は納得していない。多数決は大切とか言いながら、自分が正しいと思い込んでいる認識を変えようとしない」
●亀戸課長:「……はい、納得できません。営業日報が必要だとまだ思っています」
○鷲沢社長:「私なりの理屈をもう一度説明しよう。営業日報を書いても目標予算の達成につながらない。なら止めよう、ということだ。なぜつながらないのか。1日単位の管理は営業に合わないからだ。毎日、きちんとモノを製造していく生産現場でなら、当日の実績や歩留まりを測る意味があるだろう。だが営業はそこまで把握する必要がない」
●亀戸課長:「……」
○鷲沢社長:「我々がしなければならないのは、営業目標を絶対達成させる営業部門にすることだ。そこで私は、お客様との商談になりそうな仮説や材料を含めた『予材』を管理してくれと言っている」
●亀戸課長:「予材管理ですね。目標の2倍の予材を仕込む、という」
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