パソコンやスマートフォン、タブレットなどに触れて一日中、メールの処理をしている人がいます。明けても暮れてもメールと格闘している中間管理職もいます。
いずれもメール処理のルールがない人だと言えるでしょう。それでは時短などできません。メール処理の時間を短縮するテクニックを身に付ける必要があります。
今回も熊岡課長と鷲沢社長の会話を読んでみてください。
○鷲沢社長:「懸案の時短は少しずつ進んでいるようだね」
●熊岡課長:「はい。まだまだですが、とにかくスピード感を持ってやろうと心掛けています」
○鷲沢社長:「結構だ。課長の君が手本となって、課のみんなが早めに退社するようにしてくれ」
●熊岡課長:「かしこまりました」
○鷲沢社長:「長時間労働が習慣になっている会社に優秀な若者など入ってこない。採用に関わる問題でもあるから頼むぞ」
●熊岡課長:「どんな小さな無駄でも省いていこうと考えています」
○鷲沢社長:「そこまで神経質にならなくてもいいが。ところで昨日、出張先から送ったメールを見てくれたか」
●熊岡課長:「ええっと……。どのメールでしたか」
○鷲沢社長:「B社との取引の件だ」
●熊岡課長:「その件ですか、昨日チェックはしましたが返信しておりませんでした。申し訳ありません」
○鷲沢社長:「返信はもういいから、すぐ猪俣くんに頼んでくれ」
●熊岡課長:「はい。あっ、猪俣くんは今週ずっと福岡です。メールしておきます」
○鷲沢社長:「なんだ、東京にいないのか」
●熊岡課長:「そうです。メールが来ていましたが……。そういえばB社の件で連絡があるかもしれないので福岡出張の件を社長に伝えてほしいと言われていました。彼のメールを転送しようとして、すっかり忘れていました」
○鷲沢社長:「それも今聞いたからもういい。とにかく猪俣くんに連絡してくれ」
●熊岡課長:「はい。連絡と言えば、明石専務から問い合わせが来ていました」
○鷲沢社長:「私のところにもccで入っていた。販路を拡大するうえでX社との提携が不可欠だと思うが営業課長の意見を聞きたい、ということだったな」
●熊岡課長:「そうです。明石専務にメールを返しておきます」
○鷲沢社長:「おいおい、ちょっと待て」
●熊岡課長:「え?」
○鷲沢社長:「さっきから聞いていると君はメールが来てもすぐにアクションを起こさないようだな」
●熊岡課長:「メールが結構多いもので。先日数えたのですが毎朝出勤して見るメールの数はだいたい30通ぐらいです。さらに日中にも30通は来ます。全部見るだけでも大変で、返信をする時間がなかなかとれないのです」
○鷲沢社長:「確かに数が多いな。ということは受信したメールを見てから何のアクションに起こさずに、いったん閉じるわけだ」
●熊岡課長:「後で返信しようと思いまして」
○鷲沢社長:「後でゆっくり返信しようとしても、新しいメールが次から次へと来るだろう」
アクションをとらないのに読むのはムダ
●熊岡課長:「ですから返信が遅れ気味です」
○鷲沢社長:「君の家に郵便配達がきた。呼び鈴を鳴らしている」
●熊岡課長:「な、なんの話ですか」
○鷲沢社長:「君は家のドアを開ける。郵便配達の人が手にしている小包を目にする」
●熊岡課長:「……」
○鷲沢社長:「自分宛の小包だと確認すると君はドアを閉める」
●熊岡課長:「え、ど……どういうことですか」
○鷲沢社長:「確認だけして小包を受け取るというアクションをとらない。君のメール処理と同じような話だよ」
●熊岡課長:「うーん」
○鷲沢社長:「メールを二度見、三度見するのは止めたまえ。時間の無駄になる」
●熊岡課長:「二度見は駄目ということは、メールを見るのは一度だけということですか」
○鷲沢社長:「そうだ」
●熊岡課長:「そんなの無理ですよ!」
○鷲沢社長:「どうして」
●熊岡課長:「だって30通もメールが来ていたら、まず全部開くじゃないですか。それから返信や転送が必要なものだけ、後でもう一回開きますよ」
○鷲沢社長:「そんなことをやっているからアクションをすぐにとれない」
●熊岡課長:「どうすればいいのですか」
○鷲沢社長:「返信しながら読む」
●熊岡課長:「え……?」
○鷲沢社長:「メールを開けたら、すぐ返信ボタンを押す。メールの文章と対話をするようにして、返信を書いていく」
●熊岡課長:「メールを全部読む前から返信を書くのですか」
○鷲沢社長:「そのほうが早くメールを返すことができるからな。『お世話になっております』でもいい。まずは書く。何も書かずに閉じるから、二度見や三度見が必要になる」
●熊岡課長:「すべてのメールに返信を書くと、かえって効率が悪いじゃないですか」
○鷲沢社長:「慌てるな。君は毎朝、30通メールを受け取ると言った。返信を書かなければならないメールがどれか分からないのか」
●熊岡課長:「そうですね、差出人とタイトルを見れば予想はつきます」
○鷲沢社長:「だろう。それが判断できれば、"無駄撃ち"は避けられる。読むべきメールだけをピックアップして、いきなり返信を書き始めればいい」
●熊岡課長:「急いで返信しなくてよさそうなメールはどうすればいいのですか」
○鷲沢社長:「フラグを立てるなりして忘れないようにし、時間があるときに読めばいい。時系列に従って順にメールを読む必要はない。とにかく『二度見』は止めたまえ。『1回しか見ない』と誓えば、一気に時間を短縮できる」
●熊岡課長:「やってみます」
メール処理にもルールが必要
たかがメール、されどメールです。
数十通を超えるメールを毎日処理する経営者や管理者の方々には、あるルールを持ってメールに対処することを強くお勧めします。
無計画にメールを見たり、気分で返信を書いたり書かなかったりしていると、それだけで一日が終わってしまいかねないからです。
お薦めするのは今回ご紹介した、「メールを二度見しない」というルールです。「読んでから返信する」のではなく「返信しながら読む」という癖を付けると見違えるようにメール処理が速くなります。ぜひお試しください。
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