身の程をわきまえないマネジャーが巷に沢山います。やたらと自己主張するマネジャーを見ていると痛々しく感じます。
マネジメントサイクルを正しく回すためには、マネジャーが主役であってはいけません。
鷲沢社長と揚羽課長の会話を読んでみてください。
「君は勘違いしている」
○鷲沢社長 :「先ほど営業会議に同席させてもらったが君は勘違いしているな」
●揚羽課長 :「え」
○鷲沢社長 :「マネジャーの心構えができていない」
●揚羽課長 :「どういうことでしょう」
○鷲沢社長 :「マネジャーのあり方について教わったことはあるか」
●揚羽課長:「ありません。社長が以前いたメガバンクなら、マネジャーをしっかり育てる教育プログラムがあるのでしょうが」
○鷲沢社長 :「ないな」
●揚羽課長:「ええ、ないのですか」
○鷲沢社長 :「研修プログラムはもちろんあるがそれだけでマネジャーの力がつくわけではない。経験を積み、優秀な先輩から教わってこそ体得できる」
●揚羽課長 :「優秀な先輩ですか。当社は創業3年のベンチャーですから創業者の会長を除けば私に先輩はいません」
○鷲沢社長 :「やけに堂々としているな」
●揚羽課長 :「大先輩として教えてください。私は何を勘違いしているのでしょうか」
○鷲沢社長 :「営業課長なのに営業会議のやり方がなっていない」
●揚羽課長 :「はあ」
○鷲沢社長 :「おいおい。君がやっていた会議、90分もかかったぞ。営業担当者を90分も椅子に座らせておいて、君はタダだと思っているのか」
●揚羽課長 :「いえ、そんな」
○鷲沢社長 :「君は会長と一緒にこの会社をつくった創業メンバーだ。3年前もあんなに悠長な会議をしていたのか」
●揚羽課長 :「悠長って……。創業当時はそもそも会議をしていたのかどうか。会長は一心不乱にアプリをつくっていて、私が朝から晩まで走り回って売りに行く。1分でも惜しいと思うぐらいハードワークをしていましたね」
○鷲沢社長 :「起業時はどの会社もそういうものだ」
「好業績が続き、たるみ始めている」
●揚羽課長:「あのう、90分も会議をしてましたか」
○鷲沢社長 :「時計を持っていないのか、君は。時間感覚まで歪んできているぞ。好業績が続いてきたから、たるみ始めている」
●揚羽課長 :「うう」
○鷲沢社長 :「会議がなぜ長くなるかわかるか」
●揚羽課長:「何か法則があるのですか」
○鷲沢社長 :「ある。ベンチャーだろうが大企業だろうが、会議が長くなる理由は同じだ」
●揚羽課長 :「教えてください」
○鷲沢社長 :「喋るからだよ」
●揚羽課長 :「え」
○鷲沢社長 :「喋るから長くなる。違うか」
●揚羽課長 :「そりゃあ、そうでしょうが」
○鷲沢社長 :「さっきの会議、誰が喋っていたかね」
●揚羽課長 :「えーっと……」
「会議で9割は君が喋っていた」
○鷲沢社長 :「君だよ」
●揚羽課長 :「そ、そうでしたか」
○鷲沢社長 :「90分のうち、君が80分以上、話していた」
●揚羽課長 :「そんなことはありませんよ。話が大げさです」
○鷲沢社長 :「大げさじゃない。私はずっと聞いていた。9割は君が喋っていた」
●揚羽課長:「部下たちが喋らないからです」
○鷲沢社長 :「それが勘違いだ。君が喋るから相手は喋ることができなくなる」
●揚羽課長 :「私が黙ればみんなはもっと喋るというのですか」
○鷲沢社長 :「そうだ。必要最小限のやり取りをすれば30分で済むだろう」
●揚羽課長 :「ちょっと待ってください。5月に全員と個別面談したとき、傾聴を心がけました。でもほとんど喋らないので、私が口を開くしかなかったのです」
○鷲沢社長 :「それも違う。君が喋るからだ。考えてみろ。君の部下たちは日ごろから無口なのか」
●揚羽課長 :「みんなよく喋っています。でも、私が課長になってから、なかなか喋ってくれません」
○鷲沢社長 :「年齢は同じぐらいかな」
●揚羽課長 :「そうですね……。私はまだ25歳、創業メンバーというだけで課長にしてもらいましたから、年上の部下も何人かいます」
○鷺沢社長 :「日ごろから前のめりで何事についてもよく喋る上司がいる。そういう上司に向かってよく喋る部下は少ない」
●揚羽課長 :「そういうものでしょうか」
○鷲沢社長 :「面談のときだけ傾聴を心がけたって駄目だ」
●揚羽課長:「うーーーーん」
「マネジャーならバイプレイヤーに徹しろ」
○鷲沢社長 :「とにかく君はマネジャーだ。バイプレイヤーに徹しろ」
●揚羽課長:「バイプレイヤー?」
○鷲沢社長 :「脇役だよ」
●揚羽課長:「脇役……主役はだれですか」
○鷲沢社長 :「部下に決まっておる。主役のセリフを私は聞きたかった。それなのに脇役の君のセリフがなぜあれほど多いのか。脇役ばかり喋るドラマなんて誰が見るか」
●揚羽課長:「……そ、そうですね」
○鷲沢社長 :「一人の人間の成長物語をドラマにするとしよう。葛藤と衝突を乗り越える様が描かれる」
●揚羽課長 :「私はそのストーリーの脇役なのですね」
○鷲沢社長 :「そうだ。それなのに君自身が前面に出すぎる。やたらと自己主張しているがうるさい」
●揚羽課長 :「あのう、脚本は誰が書くのですか。社長ですか」
○鷲沢社長 :「営業の脚本だろう、君に決まっている。部下が成長するストーリーを君自身が考えたまえ。そしてストーリー通りにうまく進むように、君が脇を固めろ」
●揚羽課長 :「見守るということですか」
○鷲沢社長 :「時には見守り、時には叱りたまえ。部下にいい顔ばかりする必要はない」
組織の主役は現場の一人ひとり
組織において主役は現場を支える一人ひとりです。
彼らを束ねるマネジャーはあくまでも脇役です。社長にいたってはチョイ役でしょう。
葛藤する主役を叱咤激励し、成長させる。それが脇を固めるバイプレーヤーに求められます。
■訂正履歴
当初、発言者を「鷺沢社長」とすべきところ、「揚羽課長」と誤って記載されている箇所がありました。お詫びして訂正します。記事は修正済です。
[2018/7/11 12:00]
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