●小鹿コンサルタント:「ええ。ですが、わかりました、とは言えません。例外を認めては駄目です」

○鷲沢社長:「だが」

●小鹿コンサルタント:「日曜の朝までに予材を2倍にすればいいだけの話です。顧客データを吟味し、『この客にはこういう予材があるはず』と仮説を立ててもらう。土曜の夜に集中し、一気に片付けてしまえばいいのです。時間を長くかければかけるほど、作業の密度が低くなります」

○鷲沢社長:「うーむ」

●小鹿コンサルタント:「何か問題がありますか」

○鷲沢社長:「いや、ないのだが」

●小鹿コンサルタント:「……」

○鷲沢社長:「君は確か40歳だったな」

●小鹿コンサルタント:「はい」

○鷲沢社長:「年齢は関係ないかもしれないが、それにしても君はクールだ。気持ちいいぐらい、淡々としている」

●小鹿コンサルタント:「褒めていただいたと受け止めます」

○鷲沢社長:「もちろん褒めている。私が君の年齢のころは銀行の支店長だったが、気性が荒いことで有名だった。すぐ感情的になってしまい、周りを困らせていたな」

●小鹿コンサルタント:「今でもときどきそうなるではありませんか」

○鷲沢社長:「はっきり言ってくれるな。確かにそうだが、昔の私は今の比じゃない。気性の荒さから『荒鷲』と呼ばれていた」

●小鹿コンサルタント:「そのニックネーム、似合っていますね」

○鷲沢社長:「馬鹿言っちゃいかん。私は気に入っとらんかった。ところで、どうしたら君のようにいつも冷静でいられるのかね。感情的になると肝心の軸がぶれてしまう」

●小鹿コンサルタント:「私もそれなりに気性が激しいほうだと思っています」

○鷲沢社長:「そうなのか。まったくそう見えないが」

●小鹿コンサルタント:「事情があって幼いころから父母の怒鳴り合いを毎晩のように聞かされました。ですが私も気性が荒く、両親に反発したり、周囲に当たったりしていました」

○鷲沢社長:「……」

●小鹿コンサルタント:「高校へは行かず、16歳から住み込みの寮に入り、力仕事をしていました。色々な現場を転々とされている方と一緒に働くことが多く、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりましたね」

○鷲沢社長:「そこで感情を抑えられるようになったのかな」

●小鹿コンサルタント:「そうでもなかったようが気がしますが、とにかく仕事をしなければなりませんでしたから。ひょんなことから営業をやってみるかと言われ、結果を出せるようになると社長が営業幹部に引き上げてくださいました」

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