●日高人事部長:「そ、そうかもしれません」
○鷲沢社長:「だいたい、研修を受ける気がある営業が何人いる」
●日高人事部長:「……研修を受けるくらいなら仕事をしていたほうがいい、とか言う営業が多いでしょうね」
○鷲沢社長:「その通りだ。にもかかわらず、こっちが期待した仕事をなかなかしてくれない」
●日高人事部長:「なるほど、それでしたらスキルアップ研修の前に、モチベーションアップ研修を受けさせるのはいかがでしょうか」
○鷲沢社長:「いい加減に現状維持バイアスをはずしたまえ。君の発想はことごとく、目標達成からずれている。当たり前のことをやるのにモチベーションなんて関係ない。市況が悪かったから目標達成は不可能。行きたくないお客様には足を向けたくない。出たくない研修には参加したくない。そもそもモチベーションが上がらない。そういう営業にどんなスキルアップを望むんだ」
●日高人事部長:「そ、そう言われましても」
○鷲沢社長:「経理部の新人はやるべきことをやっていると聞いた。ぜひともスキルアップ研修を受けてもらおう。将来のために管理会計などのスキルを手に入れてほしいからな」
●日高人事部長:「ということは当社の営業には……」
○鷲沢社長:「今の営業にスキルアップ研修など不要だ! やるべきことをやるようになる研修、目標を達成する習慣が身に付く研修を探し出して、それを受けさせろ。コミュニケーション能力を上げなくても、プレゼン能力が従来通りでも、目標を達成してもらう。スキルアップはその後だ」
個人のスキルを上げなくても結果は出せる
現場に入ってコンサルティングをするときに一番悩ましい問題は「スキルアップ主義」が根強いことです。経営者や管理職は営業のスキルアップを求めてきます。しかし、個人のスキルをアップしなくても結果は出せるものです。ほとんどのケースがそうです。
なぜそう言い切れるのか。コミュニケーション能力や提案能力がそれほど高くなくても、目標をきちんと達成する営業が一定数いるからです。これは現場で確認できます。他の営業も同じように「目標は達成するもの」と考えて動くようになれば、組織として結果を出せます。
もちろん、組織としての戦略とマネジメントも大事です。どのお客様の、どの役職の人に、どのタイミングで会い、どう継続して接触して、どんな話をするのか。その点をはっきりさせなければなりません。
明確な戦略に沿って接触を繰り返し、営業の材料である「予材」を潤沢に積み上げておけば、年間目標は必ず達成できます。繰り返しますが個人のスキルアップをしなくても可能です。
スキルアップをやたらと求める組織は、組織マネジメントを放棄し、個人の属人的な能力に頼っていると言えます。そうした姿勢を修正していかない限り、目標を絶対達成する組織にはなりません。
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