「毎日9回の素振りでホームランが打てるのか」

●揚羽課長:「それでも現場の営業たちにとって大変でした」

○鷲沢社長:「何を言っている。素振りを1日3回しかやってこなかった野球選手が3倍やったところで9回だ。毎日9回の素振りでホームランが打てるようになるのか」

●揚羽課長:「ちょっと待ってください。いくら何でも我々の努力が素振り9回ってことはないでしょう」

○鷲沢社長:「おいおい。営業1人あたり1日1件ぐらいしか、顧客訪問をしていなかったじゃないか」

●揚羽課長:「……いや、1日1件ということは」

○鷲沢社長:「当社のアプリを導入するために顧客を訪問した場合、それはサポートであって営業とは呼ばない。サポートを抜いたら、本来の営業活動は1日1件弱だった」

●揚羽課長:「サポート以外の訪問を数えても1日1件ということはないはずです」

○鷲沢社長:「先方から問い合わせが来て、それに応えるための訪問も入れていないか」

●揚羽課長:「はい。当社のフィンテックアプリは評判がよく、引き合いがとても多かったものですから」

○鷲沢社長:「引き合い対応は営業じゃない。あれほど言っただろう。引き合いがないところを訪問し、顧客を開拓し、予材を仕込む。これが営業だ」

●揚羽課長:「営業の材料を予め仕込むことですね」

○鷲沢社長:「創業者がなぜ私を社長として招いたか、知っているだろう。当社に予材管理を定着させるためだ」

●揚羽課長:「営業目標を絶対達成させるために目標の2倍の予材を仕込む手法ですね。引き合い対応ばかりでは待ちの営業になり予材を積めません」

○鷲沢社長:「その通り。ところがそういう攻める営業を途中で止めてしまった」

●揚羽課長:「攻める姿勢で営業しなければならないことはわかっています」

○鷲沢社長:「本当にわかっているのだったら、どうして勢いがなくなってきたのか」

●揚羽課長:「5月中旬から大量行動しようと、金融機関をリストアップし、キーパーソンとの接触を繰り返してきたのですが……。どうもクレームが増えてきまして」

○鷲沢社長:「クレームだと」

●揚羽課長:「はい。何回か足を運んだところ、興味はない、もう来ないでくれ、迷惑だ、と言われたそうです」