●小鹿コンサルタント:「アントレプレナーシップが旺盛な人でしょうか。創造性に富んだ起業家精神が欠かせません」

○鷲沢社長:「スマートな表現は止めてくれ。何が起業家精神だ。机の上の言葉にすぎん。現場でたたき上げてきた私にはまったくぴんとこない」

●小鹿コンサルタント:「それではどう言えば」

○鷲沢社長:「覚悟を決められる奴だ。言い換えると、私利私欲、権威欲、征服欲がある。露骨な言い方だが、こういうものがないと腹が据わらない」

●小鹿コンサルタント:「起業なら株式公開の夢もありますし、社会に貢献するという使命感もあるでしょう。ところが、歴史のある事業を抱えた会社の中で新規事業を始めようとすると、夢を描きにくいですね」

○鷲沢社長:「結局、覚悟が決まらんのだよ。新規事業が失敗したって、給料は支払われる。何か負債をしょいこむわけでもない」

●小鹿コンサルタント:「犬神専務の覚悟はどうですか」

○鷲沢社長:「ない」

●小鹿コンサルタント:「これはまた、言い切りましたね」

○鷲沢社長:「根拠は予材管理だ。新規事業についても、営業の材料を予め仕込む。5年後くらいまで積んでほしいと頼んだが、専務は『5年後なんて、わかりません』の一点張りだ。予材はあくまでも仮説だが、それを立てられないなんて、考え抜いていないし、現場まわりが足らん。わからないのではなく、逃げているだけだ」

●小鹿コンサルタント:「予材を仕込めないと、新規事業を担当する社員に具体的な将来を見せられませんね。そこまでわかっていて黙認してきたのは、専務が先代社長のご子息だからですか」

○鷲沢社長:「それ以外にないじゃないか。普通の幹部だったら、こんなことは許されん」

●小鹿コンサルタント:「では、決断してください」

○鷲沢社長:「……」

●小鹿コンサルタント:「赤字額は容認できないところに来ています。将来の予材を仕込めないようでは展望はありません」

○鷲沢社長:「私が専務に言おう」

●小鹿コンサルタント:「よろしくお願いします。それに関連して私から提案があります」

○鷲沢社長:「なんだ」

●小鹿コンサルタント:「専務にもう一度現場を経験してもらったほうがいいと思います」

○鷲沢社長:「現場ってどこを」

●小鹿コンサルタント:「お客様まわりをしてもらいましょう」

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