○鷲沢社長:「人聞きの悪い例えだな。細部にまで神経を使うことが重要だと言いたいだけだ。まだ納得していないようだから、現場でセンスした話をしておく。この間、業界団体の会合に出たら、X社の管理職にばったり会った。偶然にも私が銀行員だった時の知り合いだった。彼も銀行を辞めて同業他社に移っていたのだな」

●明石専務:「世間は狭いですね」

○鷲沢社長:「ああ。向こうもつい気が緩んだのか、愚痴をこぼしていた。X社の社長は広告代理店から有名なマーケッターを引き抜いてマーケティング部を創設したそうだが、彼らマーケッターと現場の営業部門が噛み合っておらず、困っているそうだ」

●明石専務:「そ、そうなのですか……」

○鷲沢社長:「実際のお客様の動きにあまり興味を持たず、プロモーションの手段にこだわるそうだ。確かにフェイスブックやインスタグラムへの反応はいいが、それがきっかけで注文を取れた例はまだないらしい。X社の業績が堅調なのは、営業が一所懸命、お客様に顔を出しているからだと言っていた」

●明石専務:「……」

○鷲沢社長:「ところで話は変わるが加治木君の件だ。私から説得しておいた。もう少しやってみると言っていた。少なくとも年内は退職しない」

●明石専務:「ええっ? 加治木係長が」

○鷲沢社長:「知らなかったのか。君の検知力はどうなっている。性能の問題じゃないな、センサーが壊れている」

●明石専務:「社長、誰に聞いたのですか」

○鷲沢社長:「誰からも聞いてない。最近の加治木君の言動を観察していればわかる。だから呼び出して事情を聞いた」

●明石専務:「面目ありません」

○鷲沢社長:「そんなセンサーでは困るぞ。社外のコンサルタントに会うのはかまわないが、社内の様子にも、もっと気を配ってくれ。そうでないと今の時代、渡っていけない」

激流の中でビジネスをしているのが現代

 川の激流の中でビジネスをしているのが現代と言えます。高い空ばかりにアンテナを張っていると、足元をすくわれ、溺れてしまいかねません。

 現場のありとあらゆる所にセンサーを取り付けるつもりで、細部にまで神経をとがらせておきましょう。

 といってもセンサーと同じで異変があったときだけ作動すればよいのです。24時間ずっと気にしているということではもちろんありません。